【在宅医療】嚥下障害ありの高齢者にとって安全なのは「真横に寝て食べる」スタイル…医師が教える「完全側臥位」のすごいメリット

【在宅医療】嚥下障害ありの高齢者にとって安全なのは「真横に寝て食べる」スタイル…医師が教える「完全側臥位」のすごいメリット
(画像はイメージです/PIXTA)

在宅医療を提供する医師、医療関係者として「嚥下障害」を持つ患者さんへの対応をどのように考えればいいのでしょうか。今回は、経鼻胃管・胃ろうの役割と、嚥下機能の評価方法、そして嚥下障害のある患者さんへの対応として、完全側臥位という食事姿勢について見ていきます。医療法人あい友会理事長の野末睦医師が、在宅医療の最新事情について解説します。

一度「口から食べられなくなった」高齢者は…

高齢者から「楽しみは食べることだけ」という言葉を聞くこともありますが、一方で「食べられなくなったら終わり」などと昔からいわれてきました。

 

以前の記事『いかにして「中太りくらいの体型」を維持するか…医療関係者が心血を注ぐ、在宅医療の戦略【医師が解説】』では、高齢者をはじめとする在宅患者さんの多くは栄養状態が悪いことをお伝えしましたが、では、改善するには、経口摂取量を増やすことより、経鼻胃管や胃ろうからの人工栄養剤の投与などを検討すべきなのでしょうか?

 

もしも、一度食べられなくなってしまったら、もう二度と食べられるようにはならないのでしょうか? 努力することに意味はないのでしょうか?

「経鼻胃管」と「胃ろう」、それぞれの役割と注意点

嚥下障害を持つ患者さんへの対応としてまず考えるのは、経鼻胃管や胃ろうからの人工栄養剤の投与です。

 

これらの栄養投与法は、その吸収経路として、腸管、肝臓を通るので、点滴による栄養補給に比較して、より自然に近く、体への負担も少ないので、重要な栄養補給経路と考えられます。

 

栄養状態が悪く、嚥下機能も不十分な患者さんには第一選択肢だと言えるでしょう。経鼻胃管、胃ろうには、それぞれメリット・デメリットがありますので、整理してみたいと思います。

 

■「経鼻胃管」…体を傷つけずに留置できるが、「管の先」の所在に細心の注意が必須

経鼻胃管は体に傷をつけることなく留置することができるので、患者さんのご家族にとって受け入れやすい方法と言えます。

 

しかし、管が喉の奥を通っているので、患者さんは常に不快に感じますし、この管の存在そのものが口腔ケアの障害になったり、ただでさえ障害されている嚥下機能をさらに低下させるリスクがあります。

 

また、管の先が胃内に入っていることをレントゲンで確かめる必要があるほか、患者さんの舌の運動などで管の先端が口腔内に移動したり、最悪の場合、気管内に迷入してしまったりすることもあります。

 

もし気管内にあるときに栄養剤を投与してしまうと、即、死に直結する恐れがあるので、とても怖い状況です。

 

ちなみにシリンジ内の空気を、胃管を通して注入し、心窩部でその音を聴取して、管の先が胃内にあることを確かめる方法(気泡音聴取法)は、不正確な場合があることが指摘されており、現在では、レントゲンでの位置確認がより確実な方法とされています。

 

※ 医療事故の再発防止に向けた提言 第6号 栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析,一般社団法人 日本医療安全調査機構,2018年9月,

https://www.medsafe.or.jp/teigen/teigen-06.pdf

 

したがって、在宅医療を提供する医療機関では、ポータブルレントゲン装置を備えておくことが強く推奨されます。

 

■「胃ろう」…体の負担は少ないが食事の楽しみは皆無、造設しても使えないケースあり

胃ろうは経鼻胃管に比べると、作成時にやや身体的負担が大きいことは事実です。しかし、一度造設してしまえば、その後の患者さんの負担は少なく、より推奨されるものと言えます。

 

ただ、筆者が前職で胃ろうを造設した患者さんのその後について追跡調査を行なったところ、約1割の患者さんが胃ろうを使えず、また、生存期間の中央値は約1年間でした。胃ろうから栄養剤を注入すると唾液が増え、その唾液の誤嚥によって肺炎になってしまい、結局使えなかったという方が一定数いたのです。

 

そこを乗り越えても、胃ろうを造設する原因になった原疾患もあり、それほど長生きできないというケースを念頭に置いておく必要があります。

 

そして何と言っても、人工栄養剤にしろ、その他の食物にしろ、口腔を通らないので、食物の味を感じることができず「食べることを楽しむ」境地には到底到達できません。

なぜ「嚥下機能評価」が重要なのか?

嚥下機能をできるだけ正しく、またタイミングよく評価することはとても大切です。

 

病院に入院中に「むせ」がひどくなったとか、誤嚥性肺炎をきたしたとかの理由で、食事摂取を止められ、胃ろうからの栄養摂取のみになっている患者さんも多いのですが、その後体力が回復したり、意識状態が改善したりして、嚥下機能が回復していることがよくあります。

 

また逆に、むせが少ないので、嚥下機能障害はあまりないと判断されて経口摂取継続で退院してきた患者さんの中には、実際は不顕性誤嚥といって、症状がないのに誤嚥を繰り返してしまっている患者さんも、少なからず存在します。

 

ですから、在宅療養に移行したとき、さらには患者さんの状況が変わったときには、嚥下機能評価を適切に行う必要があります。

 

在宅医療の場で行える嚥下機能評価法にはいくつかあります。

 

比較的簡易に、ベッドサイドで行えるものとしては、 30秒間に何回唾を飲み込めるかを見る反復唾液嚥下テスト(RSST)、少量の水を飲んでもらい、むせ・声の変化などを観察する改訂水飲みテスト(MWST)があります。

 

これらはいつでも簡単に実施できるので、患者さんの容態が変化したなと感じたときには、さっとやってみるのが肝心です。

 

そして何と言っても、在宅の場で嚥下機能を詳細に検討できるのは、嚥下内視鏡検査(VE)です。

 

この検査では、鼻から細い内視鏡を入れて、喉の上の部分(上咽頭部)に内視鏡先端を置き、咽頭から気管入口部を視野に入れ、まずはその部分の形態学的変化がないかどうか、食物残渣がないか、唾液の誤嚥がないかなどを観察します。

 

その後、着色した飲み物、ゼリーなどを食べてもらって、それらが誤嚥されないかどうか、あるいは一回の嚥下で全て飲み込まれているかどうかなどを観察するのです。

 

また、食事の時の姿勢によっても所見は変わるので、座位で誤嚥が疑われた場合には、後述する完全側臥位で試したりします。

 

嚥下内視鏡検査を行うための機器を揃えるには数百万円かかりますが、実施そのものは、内視鏡の経験のある医師なら、それほど難しくなくできるので、ぜひ導入を考えてもらいたいと思います。

「完全側臥位」は、より安全な食事の姿勢

従来は、ベッド上で上半身を30度くらい上げて食べてもらう「30度仰臥位法」という方法が嚥下障害のある患者さんの標準的な食事姿勢でした。

 

しかし実際は、口腔から咽頭に送り込みがうまくできない患者さんにとってはいい姿勢ですが、食物がそのまま重力で気管に入ってしまうことがあり、かえって危険な姿勢ではないかと考えられるようになってきています。

 

これに対し福村直毅医師(現健和会病院)は、世界で初めて、「完全側臥位」という寝転んでテレビを見ているような姿勢で安全に食事ができることに気がつき、学会などで発表を行いました。

 

「完全側臥位」の姿勢では、喉の横側にスペースを確保できるため、一回で飲み込めずに残った食物がそのスペースに溜まり、誤嚥しなくてすむことを発見したのです。

 

これにより、複数回嚥下や、水によるフィニッシュ嚥下といった嚥下の工夫もできるようになるのです。

 

本来なら、嚥下内視鏡検査を実施して、完全側臥位で安全に食事が摂れることを確認しながら経口摂取を進めるのですが、嚥下内視鏡がない場合でも、むせることが多い患者さんには、完全側臥位を試してみることもお勧めします。

 

そうすると、むせが少なくなるばかりでなく、側臥位をとることによって痰の排出も促進されるので、一石二鳥の効果が期待できるのです。

 

入院中は満足に食べることができなかった、また食べることを禁止されていた患者さんが、在宅で食べることができるようになった例はたくさんあります。諦めずにチャレンジしていきたいですね。

 

 

野末 睦
医師

医療法人 あい友会  理事長

 

 

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