前回は、世界遺産「タージ・マハル」を訪れた著者の感想を紹介しました。今回は、イスラムとヒンドゥーの文化を持つ町「ジャイプール」の思い出を見ていきます。

建物がピンク色で統一された、美しい旧市街

アーグラの南西三五キロメートルに世界遺産登録のアクバル帝城跡、ファテーブル・スィークリーがある。

 

イスラムとヒンドゥーの混合建築でアクバルの理想の夢の都だったが、十四年居城しただけで、水に塩気が多いという理由で捨てられたもったいなさで、ただムガール帝国の富と権力を示す豪華な城である。

 

道中今回は馴れたので、五時間半後に無事ジャイプールの混雑した旧市街に着き、いかにもインドといった開放的なレストランでナンを主食とするご馳走だ。楽士がシタール(演奏弦と共振弦の二本)を奏で、中庭で蛇使いがコブラを躍らせる。老女が炭火焼きの土鍋でナンをつくる。

 

ホテルの食事はインドらしさを感じられるメニューだった
ホテルの食事はインドらしさを感じられるメニューだった

 

人口約三百十万人のこの都市の旧市街は建物がピンク色で統一されて美しいが、道路は雑踏で無茶苦茶にちらかっている。初めてのゾウに出会った。ラクダさえもいて、西方の砂漠の空気が流れて来るようだった。

 

歩道に倒れたばかりの一頭のノラウシが横たわり、ノライヌ三、四頭が腹からハラワタを食いちぎっているというギョッとする光景に出会ったが、通行の大人は勿論子供さえ平然と目もくれない。これが悟りの世界か。

 

英国植民地時代にヒンドゥーの藩王をマハーラージャと呼び、地位を黙認したが、その王が今でも住んでいるシテイ・パレスに着いた。

 

この宮殿を見てもマハーラージャは今でも豪奢に生活している。貧富の格差があまりにも大きい。しかしテキスタイル展示館は豪華繊細でヒンドゥー芸術の粋と言ってもよい。

 

パレスの隣に天文学を好んだマハーラージャが欧州の書物などを参考にして、石造りの観測器を集めた天文台ジャンタル・マンタルがあり、なかなかモダンだが、以前は占星術に利用されたという。

 

新市街にある「ジャイマハール」は、今度の旅で一番広大で優れたホテルである。テラスでラジャスタン州の民族舞踊を鑑賞したがサリーが実に美しく、指を微妙に絡める煽情的な振付けで食事も進んだ。

ジープに分乗し、ジャイプールからデリーへ

二十六日の朝になり最後のコースであるジャイプールからデリーまで四時間半の道をバスで出発した。一一キロメートル北東へ走るとアンベール城が見えて来る。周囲の町を圧倒して建つ、丘の上の巨大な城だ。一六世紀のアンベール王国の首都である。

 

駐車場にはゾウが三頭並んでいて、顔をていねいに化粧され面白い。このゾウのタクシーで城へ登ることもできるが、我々ツアーはジープに分乗して丘へ上がった。

 

門を潜ると壮麗な勝利の間があった。鏡をちりばめられていて、鏡の間ともいうそうだ。庭園の反対側に歓喜の間があり、室内を水が回るように造られている。一番奥に巨大なハーレムがあるが、マハーラージャの贅沢ぶりには少し反感も感じる。しかし城下の景観も雄大で、時間もゆっくりできて良かった。

 

デリーに近づくまでウツラウツラしていたが渋滞が激しくなった。さすがデリーは首都高速道路が完備しているが、混雑して動けぬこと二時間。やっと最後の世界遺産フユマーン廟に着いた。オールドデリーの南端にありイスラム系で、タージ・マハルの原型だそうだ。左右対称は似ているが、大理石でなく砂岩らしいのでやや見劣りする。

 

日が落ちて空港へ急ぎ、不思議と不条理の国インドの名ガイド、アシュラに「ナマステ(有り難う)」と言って愉快に帰国の途についた。

21世紀の驚くべき海外旅行

21世紀の驚くべき海外旅行

藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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