「楽しかった。でも、不安も残った」…老後資金と“使う勇気”
帰国後、夫妻は家計を細かく見直すようになりました。固定資産税、保険料、車の維持費、食費。現役時代には気にならなかった支出が、退職後には重く感じられるようになります。
さらに追い打ちをかけたのが、妻・真由美さんの体調不良でした。帰国から数ヵ月後、膝の痛みが悪化し、通院とリハビリが必要になったのです。
「“元気なうちに行っておいてよかった”という気持ちはあります。でも同時に、“この先どうなるんだろう”という不安も出てきました」
厚生労働省『令和6年版 高齢社会白書』でも、高齢期には医療費や介護費の負担増加が課題とされており、長寿化によって“想定以上に老後が長くなる”可能性が指摘されています。
夫妻は、旅行後に生活水準を下げる必要に迫られました。外食を減らし、車の買い替えも延期。旅行前は「老後を楽しもう」という気持ちが強かった一方、現在は「資産を減らしすぎないこと」も強く意識しているといいます。
「クルーズを後悔しているわけじゃないんです。でも、“使った後の生活”まで、もっと具体的に考えるべきだったと思います」
一方で、夫婦の間ではこんな会話も増えました。
「結局、正解はないよね」
老後資金を“残しすぎて後悔する人”もいれば、“使いすぎて不安になる人”もいます。そのバランスは、家族構成や健康状態、価値観によって大きく変わります。
夫妻も、「旅行そのもの」より「その後の生活設計」が甘かったと感じているそうです。
「夢だったんですよ、本当に。でも、“夢を叶えた後の現実”まで想像できていませんでした」
それでも、クルーズ中に撮った写真を見返すと、夫婦は自然と笑顔になるといいます。
「あの景色は、一生忘れないと思います」
老後のお金は、“使わなければ意味がない”とも、“使いすぎれば不安になる”とも言われます。その難しさを、夫妻はいま静かに実感しています。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
