「月5万円、入れてもらえないかな」3ヵ月後に変わった空気
同居から3ヵ月ほどたったある夜、夕食後に誠さんが言いにくそうに切り出しました。
「母さん、少し相談なんだけど……月5万円、家に入れてもらえないかな」
和枝さんは一瞬、意味が分かりませんでした。
「え、5万円?」
誠さんは続けました。
「食費も光熱費も上がっているし、病院の付き添いで仕事を休むこともある。全部こっちで持つのは、正直きつくて」
和枝さんは、その場で言葉を失ったといいます。
「一緒に暮らそうと言ってくれたから、迷惑をかけないで済むと思っていたんです。でも、やっぱりお金はかかるんだと」
誠さんに悪意があったわけではありません。実際、同居後は食費や水道光熱費が増え、和枝さんの通院や薬の管理、役所の手続きなど、息子夫婦の負担も増えていました。
ただ、和枝さんにとって月5万円は大きな金額でした。年金9万円のうち5万円を入れれば、手元に残るのは4万円。医療費や日用品、交際費を考えると、自由に使えるお金はほとんどありません。
「またお金のことを考える生活に戻った気がしました」
その後、親子で改めて話し合うことになりました。誠さんは「全部を負担してほしいわけではない」と説明し、和枝さんも「払いたくないわけではない」と伝えました。
最終的に、和枝さんが家に入れる金額は月3万円にし、医療費や日用品は本人の年金から出す形にしました。食費や光熱費の一部は息子夫婦が負担し、必要に応じて自治体の高齢者支援制度も調べることにしたといいます。
「最初に決めておくべきだったんだと思います」
同居は、生活費の不安を和らげる一方で、家族の負担を見えにくくすることもあります。親子だからこそ、お金の話を避けたまま始めてしまい、後から言いづらい問題として表面化することがあるのです。
「息子を責める気持ちはありません。ただ、“一緒に暮らす”という言葉に、私が安心しすぎていたのかもしれません」
現在、和枝さんは息子夫婦の家で暮らし続けています。以前より食事や室温の不安は減りましたが、家計のことは以前より意識するようになりました。
「助けてもらうにも、ちゃんと話し合いが必要なんですね」
息子の「一緒に暮らそう」は、和枝さんにとって確かに救いの言葉でした。ただ、その先の暮らしを続けていくには、気持ちだけでは足りません。親子であっても、生活費や役割を具体的に決めておくことが、同居を続けるためには欠かせなかったのです。
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