「これなら暮らしていける」費用を抑えた移住の決断
首都圏で賃貸暮らしをしていた佐藤さん夫妻(仮名・夫69歳・妻67歳)は、数年前から老後の生活費に不安を感じていました。
夫婦の年金収入は合わせて月18万円ほど。大きな借金はないものの、家賃や光熱費、食費を合わせると、余裕のある生活とは言えませんでした。貯蓄は約1,000万円。取り崩しながら暮らしていくには、できるだけ固定費を抑える必要があると考えていたといいます。
総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯の平均消費支出は月26万3,979円です。年金18万円では、その差額を貯蓄で補い続ける必要があります。
「このまま都会で暮らし続けるのは難しいと思いました」
そう考えた夫妻は、地方への移住を検討し始めました。候補に挙がったのが、築45年の古民家でした。購入価格は数百万円と手頃で、固定資産税も比較的低い水準でした。
「家賃がなくなるだけで、かなり楽になると思いました」
多少の修繕は必要でしたが、「住みながら手を入れていけばいい」と判断し、購入を決断。庭付きで広さもあり、「ゆっくり暮らすにはちょうどいい」と感じていたといいます。
移住当初の生活は、想像していた通りのものでした。自然に囲まれた環境、静かな時間、ゆとりのある空間。
「最初の1〜2ヵ月は、本当に良かったんです」
ところが、その生活は長くは続きませんでした。変化を感じ始めたのは、移住から3ヵ月ほど経った頃でした。
まず問題になったのが、住まいそのものの状態でした。築45年ということもあり、見えない部分の劣化が進んでいたのです。雨が降ると天井の一部から水がにじみ、冬場は隙間風が強く、室内でも寒さを感じる日が増えていきました。
「修繕すれば大丈夫だと思っていましたが、思った以上に費用がかかりました」
給湯設備の不具合、配管の劣化、床の軋み。ひとつ直せば別の問題が見つかる状態でした。
さらに、生活環境の不便さも大きな負担となっていきます。最寄りのスーパーまでは車で20分。病院も同様で、気軽に通える距離ではありませんでした。
「車がないと生活できない場所でした」
しかし、夫は運転に不安を感じるようになっていました。年齢とともに反応が遅くなっていると自覚していたといいます。
「いずれ運転できなくなったら、どうするのか考えるようになりました」
生活費は確かに抑えられましたが、その分、別の負担が増えていました。光熱費も想定以上でした。断熱性能が低いため、冬は暖房費がかさみ、夏は冷房が効きにくい状態だったのです。
