手紙のとおり毎年110万円ずつ渡してくれたのに…
平穏な日常にようやく戻った2年後、税務署から「税務調査」の連絡が入ります。戸惑う両親を支えるため、Aさんも緊張していましたが、調査に同席することにしました。
やってきた調査官は、意外にも温和で聞き上手な人でした。Aさんたちは緊張が解け、祖父との思い出話や、相続の際に家族でいかに助け合ったかというエピソードを、包み隠さず話しました。祖父がいかに丁寧な人だったかを証明しようと、例の「手紙」もみせたのです。ところが、その手紙を読んだ瞬間、調査官の顔つきが変わりました。
「この手紙の内容ですと、ご想定が認められません。2,200万円贈与するという約束をした時点で2,200万円が贈与税の対象となります。この場合、贈与税は675万円です」
Aさんも両親も驚きのあまり、しばらく呆然としてしまいました。毎年110万円、つまり「贈与税がかからない範囲」で受け取っていたはずのAさんにとって、まさに青天の霹靂だったのです。
「なぜですか!? 合計2,200万円というだけでしょう。祖父は約束どおり毎年110万円ずつ送ってくれたのに、そんなのおかしいでしょう!」
善意が裏目に出た「定期贈与」という落とし穴
なぜ、毎年110万円以下の送金だったにもかかわらず、高額な課税がなされたのでしょうか。そこには、税法上の「2種類の贈与」の解釈が関係しています。
連年贈与:毎年贈与をすること。
→ 毎年の受取額が110万円以下なら非課税。
定期贈与:毎年決まった金額を贈与することがあらかじめ決まっていること。
→ 初年度に「総額(2,200万円)」の受取権利を得たとみなされる。
祖父の手紙には「2,200万円を、毎年110万円ずつ分ける」という旨が明記されていました。これが税務署には、「最初に2,200万円という大きな資産をあげる約束をして、それを分割払いにしただけ(=定期贈与)」と判断されてしまったのです。
祖父の「争いにならないように」という丁寧な筆致が、皮肉にも「確実な約束(定期贈与)」の証拠に……。家族の絆を思って書かれた手紙が、税務調査における最大の“武器”になってしまいました。
連年贈与を成功させるためのポイント
連年贈与として、毎年贈与をするということはよくあることですが、贈与をするときは毎回贈与の都度に贈与契約書を取り交わすこと、そして、形式的なものだけではなく実態も伴っていること、この2点を徹底しましょう。
また、本人が知らない、管理していない口座に祖父が贈与をするということも本来の贈与とは認められません。贈与というものは本来おくる側と受け取る側が双方に合意してなされるものになります。そのため、祖父が贈与したことを本人が知らなかったということはあってはならないことであり、それは贈与とはいえません。細心の注意を払ってください。
Aさんの祖父が抱いていた愛情に疑いの余地はありません。しかし、税務の世界はどこまでも理性的で、書類に書かれた文言をそのまま読み取ります。亡き人の想いを守るためにも、正しい知識という盾を持って備えることが重要です。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
配偶者の預金は?子ども名義の生命保険は?
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