「俺の車がない!」…空っぽの車庫で息子が初めて見た現実
誠一さんは、退院後の妻と相談した末、車を手放すことを決めました。大輔さんに事前に伝えれば、大きくもめるのは目に見えていたため、まずは買い取り業者に査定を依頼し、売却の日程まで決めました。
「本当は、ちゃんと話してからにしたかったです。でも、話し合いで変わる段階ではないと思ってしまったんです」
車が引き取られたのは、平日の午前中でした。大輔さんがまだ寝ている時間帯です。昼前に起きてきた大輔さんは、カーテンの隙間から車庫を見て、慌てて外へ飛び出しました。
「俺の車がない!」
空っぽの車庫の前で立ち尽くし、「何が起きたんだ?」と繰り返したといいます。誠一さんは、そこで初めて正面から言いました。
「売ったんだよ。もう維持できない。親の年金で持ち続ける車じゃない」
大輔さんは顔を真っ赤にして、「勝手に何してるんだ」と声を荒らげました。しばらくは口論になったものの、誠一さんも引きませんでした。
「俺たちはもう若くない。お前の生活まで抱えたまま、車まで持つ余裕はない。悪いけど、ここから先は自分で考えてくれ」
その言葉のあと、大輔さんは黙り込み、午後になっても自室から出てこなかったそうです。
数日後、変化がありました。大輔さんが自分から「近所の求人を見てみる」と言い出したのです。最初は短時間の仕事でもいいから、歩いて通える範囲で探すという話でした。
「車がなくなって初めて、自分の生活が親頼みだったことを多少実感したのかもしれません」
大きく何かが変わったわけではありません。すぐ就職が決まったわけでもなく、生活が一気に立て直されたわけでもありません。それでも誠一さんは「あの日が区切りだった」と振り返ります。
親が元気なうちは成り立っていた暮らしも、いつかは変化のときが訪れます。
「私たちも、“何となく支え続ける生活”を終わらせるしかなかったんです」
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