「頼む、少しでいいから働いてくれ」父が絞り出した言葉
その日の夕食後、誠一さんは意を決して大輔さんに声をかけました。
「頼む、少しでいいから働いてくれ」
長年、心の中で何度も考えてきた言葉でしたが、実際に口に出すのは初めてだったといいます。
大輔さんはすぐには返事をしませんでした。しばらく沈黙が続いたあと、小さく「分かってる」とだけ答えたそうです。
「その一言を聞いたとき、ほっとしたのと同時に、“もっと早く言うべきだったのかもしれない”と思いました」
その後すぐに大きな変化があったわけではありません。ただ、大輔さんは求人サイトを見るようになり、短時間の仕事について話すことも増えたといいます。
「今すぐ大きく変わらなくてもいいんです。ただ、自分の力で少しでも生活を支えるようになってほしい」
親が元気なうちは成り立っていた生活も、時間とともに前提が変わります。年金に頼る生活には限界があり、その先をどうするかは避けて通れない問題です。
「自分がいなくなったあと、この子はどうするのか。それが一番の心配です」
長年続いた関係を変えるのは簡単ではありません。それでも79歳になって初めて伝えた言葉は、これまで先送りにしてきた現実と向き合う一歩になりました。
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