「父さん、期待が重すぎるんだ」――親子関係に亀裂
納得できない健一さんは、大手はどうしたのかと聞きますが「ダメだった」「子どものときはちょっと勉強ができたけれど、高校からは必死だった。なにより就職は学業だけで判断されるものじゃないし」との返答。悔しさは感じられず、淡々とした物言いでした。
「諦めるな、まだ秋採用もあるだろう。最悪、就職浪人という手だって……」
「お父さん、その期待がずっと重荷なんだ。俺はこの会社で十分。ここから頑張りたいんだよ」
「名もない会社に入れるために、俺と母さんは頑張ってきたんじゃないぞ」
「……」
この会話が決定的な亀裂になった――そう健一さんは振り返ります。その後、息子は就職し、都内で一人暮らしを続けています。お正月に半日だけ実家に顔を見せますが、話すのは母親とだけです。
「私が悪いんでしょうね。ですが、自分たちの楽しみも老後資金の準備も削って、彼にお金を使ってきた。結果的にダメだったとしても、あそこで諦めずに大手を狙う気概を持ってほしかった。これ、親のわがままなのでしょうか」

