父が突きつけた「期限」という条件
悩んだ末、山田さんは息子に話を切り出しました。
これまでのように曖昧なまま支えるのではなく、一定の期限を設け、その間に自立の道筋をつけることを求めたのです。
「このままでは二人とも立ち行かなくなる。期限を決めて考えよう」
突然の提案に、健太さんは戸惑いを見せました。これまで大きな制約なく生活してきたため、現実として受け止めるのに時間がかかったといいます。
「正直、厳しいと思いました。でも、父の話を聞いて、自分もこのままではいけないと思いました」
民法では直系血族間に扶養義務が定められていますが、その内容は「自己の生活を犠牲にしてまで無制限に支える」ものではなく、あくまで生活を維持したうえでの相互扶助とされています。
今回のケースでも、山田さんは「支えない」という選択をしたわけではなく、「無制限に支え続ける状態を見直した」といえます。
その後、健太さんは職業訓練校に通いながら就職活動を始め、数ヵ月後には契約社員として働き始めました。現在は家に生活費を入れるようになり、将来的な一人暮らしも視野に入れているといいます。
「突き放したつもりはありません。でも、あのままだったら、どちらも苦しくなっていたと思います」
家族を支えることと、自分の生活を守ることは常に両立できるわけではないのが現実です。支援が長期化し、前提として固定化されると、その関係性自体がリスクになることがあります。
親子の同居や支援は、本来は柔軟な関係であるはずです。しかし、ルールや期限がないまま続くと、どこで見直すべきか分からなくなります。
「もっと早く話しておけばよかったとも思います。でも、あのタイミングで言わなければ、もっと大変になっていたはずです」
家族であっても、その関係が永続的に同じ形で続くとは限りません。だからこそ、支援の範囲や条件を現実的に設定し、状況に応じて見直していく必要があります。
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