(※写真はイメージです/PIXTA)

「安心」を得るための選択として多くの人が検討する、老後に向けた住み替え。とくに資産に余裕がある場合、設備やサービスが整った有料老人ホームへの入居は有力な選択肢となります。しかし、入居後の生活コストや暮らし方の変化まで見通せていないと、当初の想定とのズレが生じることもあります。資産額だけでは測れない「老後の持続性」が、近年あらためて問われています。

「準備は万全のはずでした」夫婦で決めた高級ホーム入居

「年金もあるし、貯蓄もある。子どもに迷惑をかけずに暮らしていけると思っていました」

 

そう話すのは、関東地方で暮らしていた誠一さん(仮名・78歳)と妻の道子さん(仮名・76歳)です。夫婦の年金収入は月30万円ほど。退職金の残りや預貯金、有価証券などを合わせた総資産は約9,000万円あり、自宅もすでに売却済みでした。

 

もともと二人は、「介護が必要になってから慌てたくない」という思いが強かったといいます。自宅で暮らし続ける選択肢もありましたが、階段の上り下りや将来の通院、食事の準備などを考えると、元気なうちに住み替えたほうが安心だと判断しました。

 

見学したのは、都内近郊の高級有料老人ホーム。食事は三食提供、看護師常駐、イベントも充実し、共用部もホテルのように整っていました。

 

「ここなら穏やかに暮らせそうだと感じました。むしろ、老後の理想形に近いと思ったんです」

 

入居時にはまとまった入居一時金を支払い、月額利用料も夫婦で50万円近くになる見込みでした。それでも、夫妻は「資産を取り崩しながらでも十分やっていける」と考えていました。

 

入居当初は、二人とも環境のよさに満足していました。食事の支度をしなくてよいこと、掃除や洗濯の負担が減ること、何かあればスタッフに相談できることは、大きな安心材料でした。

 

ところが、数ヵ月たつうちに、生活の実感は少しずつ変わっていきます。

 

まず重くのしかかったのが、毎月の支出です。月額利用料そのものに加え、医療費、日用品代、理美容代、外出時の交通費、施設内の有料サービスなど、想定していなかった細かな支出が積み上がっていきました。

 

「パンフレットに載っている金額だけ見ていました。実際には、その外側で出ていくお金が思ったより多かったんです」

 

さらに、道子さんの持病の通院頻度が上がり、誠一さん自身も足腰の不調から外部のリハビリに通うようになりました。高額療養費制度など公的制度はあるものの、それはあくまで医療費の自己負担を一定範囲で抑える仕組みであって、生活全体のコスト増を止めるものではありません。

 

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