個人の基準所得金額が一定水準を超える場合に、通常の所得税額を上回る差額分の税負担を求める「ミニマムタックス(特定の基準所得金額の課税の特例)」だが、2026年度税制改正大綱では、現行の基準所得金額の引き下げと、税率の引き上げが示された。つまり、課税が一気に強化される格好だ。果たして経営者たちは、どの程度この実情を把握しているのか。また、事業承継への影響はどれほどなのか。公認会計士でオーナーズ株式会社・代表取締役社長の作田隆吉氏が解説する。
買い手候補の探索状況
買い手探索は「未着手」が34.2%、約半数が準備に焦り
買い手候補の探索状況として、最多は「候補がいる」の36.9%だが、一方で「未着手」も34.2%と高い割合に。「探しているが良い買い手が見つからない」も2割強にのぼった。
富裕層課税強化を前にしたM&A準備状況に焦りがあるか尋ねたところ、「とても焦っている」が18.9%、「やや焦っている」が29.7%で、約半数が焦りを感じていることがわかった。
売却時期を意識する動きがある一方、買い手探索が未着手、または探索途上の企業も少なくない。こうした状況でスケジュールだけが先行すると、比較検討や論点整理に十分な時間を確保できず、結果としてデューデリジェンスや条件交渉といった重要なプロセスが不十分になるリスクもあるだろう。
短期間でのM&A意思決定への不安
半数超が不安、背景に「情報・判断材料不足」など
短期間でのM&A意思決定への不安について、「前倒しを検討中、または時期未定」とした経営者91人に尋ねたところ、「とても不安」が16.5%、「やや不安」が41.8%で、合わせて半数以上が不安を感じていた。
理由として、時間的猶予はもちろんのこと、「知識不足」「相手先の状況等情報が少ない」「M&Aのあとどうなるか具体的なイメージを持てない」などがあり、相手の見極めや譲渡後の見通し、知識や判断材料が十分に揃わないまま意思決定を急ぐことへの不安が強く、前倒し意向と実務面の準備との間にギャップがあることがうかがえる。
不安を感じる理由には、「知識不足」「相手先の状況等情報が少ない」「M&Aのあとどうなるか具体的なイメージを持てない」「買い手がいるかどうか」「じっくり考える時間が足りない」「何が正解かわからない」などがあがった。
オーナーズ株式会社
代表取締役社長
慶應義塾大学経済学部在学中の2005年、旧公認会計士二次試験に当時最年少で合格。現、EY新日本有限責任監査法人に入社。上場・未上場会社の監査業務を中心に従事。
2011年、現、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。製造業、テクノロジー、消費財、流通小売、ヘルスケアなど多岐に亘る日本企業のM&A案件の成功に貢献。2013年のデロイト ニューヨークオフィスでの勤務を経て、2015年からはデロイト ロンドンオフィス勤務。Advisory Corporate Finance チームのディレクターとして、日本企業の欧州M&A案件を多数支援。2019年からは東京オフィスにて、スタートアップ・ファイナンス・アドバイザリー事業を統括。国内外の多岐に亘るスタートアップの資金調達やM&A exit、事業開発を支援。
中小企業のオーナーに求められているサービスを届け、ひいては中小企業の生産性向上や事業承継といった日本の抱える大きな社会課題に取り組むべく、2021年にオーナーズ株式会社を創業。
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=12219
RISONALホームページ:https://risonal.com/
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