【富裕層課税強化】基準所得金額⇒1億6,500万円超に引き下げ、課税額⇒30%に引き上げへ…事業承継を焦る経営者たちの厳しい実情

【富裕層課税強化】基準所得金額⇒1億6,500万円超に引き下げ、課税額⇒30%に引き上げへ…事業承継を焦る経営者たちの厳しい実情
(※写真はイメージです/PIXTA)

個人の基準所得金額が一定水準を超える場合に、通常の所得税額を上回る差額分の税負担を求める「ミニマムタックス(特定の基準所得金額の課税の特例)」だが、2026年度税制改正大綱では、現行の基準所得金額の引き下げと、税率の引き上げが示された。つまり、課税が一気に強化される格好だ。果たして経営者たちは、どの程度この実情を把握しているのか。また、事業承継への影響はどれほどなのか。公認会計士でオーナーズ株式会社・代表取締役社長の作田隆吉氏が解説する。

M&A(売却)のクロージング時期を早めたい経営者の割合は

半数以上がM&Aの前倒しを意識、「2026年内へ早める予定」は22.3%

 

富裕層課税強化対象で元々2026年内を想定していた経営者以外の103名に、M&A(売却)のクロージング時期を早めたいと思うかという質問をしたところ、「2026年内へ早める予定」が22.3%、「早めるか検討中」が30.1%で、合わせて半数以上が前倒しを意識していた。一方で「まだ具体的な時期を考えていない」との回答が33.0%で最多に。「課税強化後の着地でも問題ない」は14.6%だった。

 

制度見直しをきっかけに、売却タイミングを見直そうとする動きが一定数生じていることが読み取れるが、時期を具体化できていない層も少なくなく、理解や判断材料が十分に整理されないまま前倒しを意識している懸念も残る。

 

 

元々想定していたクロージング時期については「2028年」「2027年」が中心で、中長期で考えていた層の一部が制度変更を背景に判断を早めようとしていることがうかがえる。なお、2026年内へ前倒し、または前倒しを検討すると回答した54名が想定していたクロージング時期は以下の通りだ。

 

・2027年:33.3%

・2028年:37.0%

・2029年:5.6%

・2030年:11.1%

・2031年以降:7.4%

・具体的な時期は決めていなかった:5.6%

そもそも「M&Aを検討している理由」はなにか

1位は年齢・健康上の理由、2位は後継者の不在、3位は税負担への懸念

 

最も多かった回答は「自身の年齢・健康上の理由」で37.8%だった。次いで、「後継者の不在」が31.5%、「富裕層課税強化など税負担への懸念」が30.6%と続いた。

 

オーナー自身の年齢や健康、後継者問題、将来への不安など、複数の経営課題が重なるなかで、事業承継M&Aが選択肢として浮上していることがわかる。

 

現在のM&A準備状況

「税務・法務論点の整理」「非事業資産・遊休資産の棚卸し」「月次管理の可視化」は約4割が未着手

 

完了している項目として多かったのが、「決算資料・試算表の整備(34.2%)」「月次管理の可視化(33.3%)」「株主構成・議決権の整理(32.4%)」で、それぞれ3割強が完了していると回答。

 

未着手項目として多かったのが、「税務・法務論点の整理(39.6%)」「非事業資産・遊休資産の棚卸し(37.8%)」「役員・幹部の引き継ぎ計画(35.1%)」で、こちらはそれぞれ4割弱が未着手の状況だ。

 

一方で、「役員・幹部の引き継ぎ計画」や「主要契約の棚卸し」は、進行中の回答も多く、着手しても完了に至っていない状況がうかがえる。また、売却時期への意識が動いていても、論点整理や資料整備、体制設計が追いついていない層が存在しており、スケジュール先行で進めることは難しそうだ。

 

 

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