不動産仲介業者は、あなたの利益など考えていない
不動産仲介業者はあなた(売主)の「代理人」です。ですから、あなたも当然、あなた
の利益を最優先して、あなたの希望を最大限に叶えるために働いてくれる人、それが不動
産仲介業者だと思っておられることでしょう。
しかし、残念ながら、それは幻想です。勝手な思い込みです。本当は「そうでなければいけない」のですが、残念ながら「実態は違う」のです。よくある事例を挙げて、お話ししましょう。
Aさんは、財閥系の名前の付いた大手不動産会社B社と「専任媒介契約」を結びました。自宅の土地と家屋を売るための契約です。B社を選んだのは、数社に相談したなかでB社が希望する一番高い売値を受け入れてくれたからです。もちろん、営業マンの爽やかな対応にも好感を持ちました。
新聞の折り込みなどで入ってくる周囲の物件の販売価格などから計算して、Aさんは「自分の自宅は7800万円くらいの値段にはなるだろう」と想定していました。業者と接触してその思惑を話すと、どの業者も「それくらいの価格で出せると思います」と同意してくれました。そのなかで、
「最初はもう少し高い値段でも、買い手がつく可能性はありますよ」
と言ってくれたのがB社でした。Aさんは内心、嬉しくなりました。自分の家を高く評価してくれた、価値をわかってもらえた、そんな気がして、すっかりB社に任せる気になったのです。そして、求められるまま、専任媒介契約を結びました。
専任媒介契約というのは、その業者に一定期間、独占的に販売代理人を任せる契約です(図表参照)。
業者は必ず「専任」での契約を求めてきます。売主は、複数の業者に依頼する「一般媒介契約」を選ぶこともできるのですが、通常は専任媒介契約を選ぶのが常識的になっています。それは、「一般」にすると、「力を入れて売ってもらえない」「責任を持ってもらえない」、だから売れる可能性が低くなるのではないかという印象を業者が売主に与えているからでもあります。
【図表】 媒介契約の種類と特徴
「不動産仲介業者は自分のパートナー」ではない!?
「専任ならば、チラシも作ります、折り込みにも入れます。経費をかけられます。一般となると、我々が仲介できる確約がないので、そこまで経費はかけられません」
営業マンはそんな言い方をします。それを聞いたあなたはきっと不安になって、「専任で契約した方がよさそうだ」と考えるのが普通です。
結論から言えば、Aさんはこの段階で、早くも「罠」にはまってしまっているのです。不動産仲介業者の目的は、Aさんと専任媒介契約を結ぶことです。Aさんの希望通りの金額で不動産を売ろうなどとは、思っていないのです。
「ちょっと待ってください、仲介業者のB社は、Aさんの物件を売ることでしか、利益は得られないでしょう? しかも、少しでも高く売れば、『成約価格の3%+6万円』と決められている報酬が得られるのだから、Aさんと目的は一緒。できるだけ希望通りの売値で売却することが、Aさんにとっても、B社にとってもハッピーな結末じゃないですか?」
読者から、こんな疑問の声が飛んできそうです。確かにその通りです。いえ、その通りだと、皆が思い込まされています。これが最初の勘違いです。不動産業界はそんな単純なものではありません。彼らは、もっとしたたかな、儲けの構造をつくり出して、繁栄しているのです。それを知らないあなたは、彼らの表の顔だけ見て、「仲介業者は自分のパートナー」と信じ込んでいるだけなのです。
そう言われても、まだわからないでしょう。
それでは、彼らが、あなたの知らない裏側で、どんなカラクリをつくり、どんな儲けの構造を生み出しているかを、順番に明らかにしていくことにしましょう。