今回は、ヤフー不動産とソニー不動産による新しい不動産サービスに「圧力」をかけた業界の実態を見ていきます。 ※本連載では、「不動産高く売りたい.com」代表・露木 裕良氏の著書『不動産を「高く売る」ために知っておきたい大切なこと』(現代書林)より一部を抜粋し、売りたい人が抱える「事情」につけ入る不動産業者の実態を紹介します。

「売主様から仲介手数料は頂きません」

ネットの活用といえば2015年11月、ヤフー不動産とソニー不動産が新たな不動産サービスを開始しました。「マンション流通革命おうちダイレクト」です。前に簡単に触れたように、「囲い込み」問題が表面化したことがきっかけとなって誕生しました。

 

「売主様から仲介手数料は頂きません」との姿勢には共感できます。ソニー不動産と売主直売型の不動産売却ができるもので、両手仲介を欲しがる大手不動産流通業者からすれば、やってほしくない不都合な事業でしょう。そのため、早速次のような記事が業界紙で報じられました。

 

〈大手不動産情報サイトを運営するヤフーが、中古物件流通促進に向けてソニー不動産と業務・資本提携したことが不動産業界に波紋を広げている。大手業界団体が「不動産情報サイトの中立性を損ねる」として反発。12月にヤフーへの情報提供を取りやめることを決めた。〉

業者の繁栄より消費者や市場の活性化が一番だが…

実際、全国宅地建物取引業協会連合会は2016年の2月下旬より、現在国内最大級の不動産検索サイト「ハトマークサイト」から民間物件情報サイトを経由して行っていたヤフー不動産への賃貸物件の自動掲載を中止しているのです。全国宅地建物取引業協会連合会といえば、全国各県の宅地建物取引業協会(宅建協会)を束ねる公益法人です。なぜなのでしょうか?

 

その思いの原点は、やはり「両手仲介」なのです。私は決して、両手仲介のすべてが悪いとは思いませんが、一方に偏る無理な仕組みだとも感じています。業者の繁栄より、消費者や市場が活性化することが一番大切だという基本を忘れてはいけません。

 

競争があってこそ、より良いサービスが誕生し、活性化するのが自由主義経済社会です。せっかく誕生した消費者(売主)優位の事業に早速圧力をかけるとは残念です。それは自分たちの利益を守るだけの発想で、顧客の利益を度外視しています。いったい、誰が一般顧客の味方なのでしょうか? 仲介業者は、売主の味方ではないと自ら宣言していることに気がついていないのでしょうか。

本連載は、2016年12月19日刊行の書籍『不動産を「高く売る」ために知っておきたい大切なこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産を「高く売る」ために知っておきたい大切なこと

不動産を「高く売る」ために知っておきたい大切なこと

露木 裕良

現代書林

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