たったいま、決まってしまいました…
ところで、本書の原稿を執筆し始めたばかりの2016年2月16日、前述した「ワールドビジネスサテライト」が不動産業界の暗部に迫る第2弾として、「おとり物件」を取り上げました。賃貸業界のことなので、あまり深くは触れませんが、そこで問題視されていたのは、次のようなカラクリです。
ウェブサイト上に、格安の物件があると、入居募集の広告を掲載します。しばらくして入居者が決まっても、その広告の掲載は続けます。それを見て、室内の案内を希望するお客さんが現れますが、当然案内はできません。それでも、巧みに店舗に誘導します。入居希望者は当該物件に入居できると思い来店しているにもかかわらず、「たったいま、他社で契約してしまいましたので、ご案内できません」と、業者から他の物件を勧められることになります。実は、「他の物件」というのが、業者の手数料収入が多い物件なのです。
おとり物件は立派な「宅建業法違反」
テレビの取材対象になっていたのは賃貸業者最大手のアパマンショップで、担当者が「事務の人間が間違って掲載した。忙しかったので掲載を取り下げるのを忘れた」など弁明、謝罪していました。「おとり物件」は、1月だけでも9000件の賃貸募集のうち5300件で見つかったといいます。
こうした行為は入居者やユーザーのことなどまったく考慮していないし、立派な宅建業法違反です。残念ですが、不動産業界ではこうしたことが普通に行われています。正直で真面目に取り組む業者ほど損をしてしまうこの業界のシステムが変わり、誠実に仕事に取り組む業者が正しく評価されるようになることを、私は期待しています。