婚活市場でモテる高年収男性に向けられる「期待の眼差し」
「年収が800万円を超えたあたりから、婚活パーティーで女性から声をかけられる回数が明らかに増えました」
都内の大手メーカーで働くタローさん(仮名・36歳)は、婚活を始めた当初の順調な滑り出しを振り返ります。現在の年収は約860万円。同世代の平均を大きく上回っており、マッチングアプリや婚活パーティーで女性に困ることはありませんでした。
「最初はモテて嬉しかったんですが、何人かの女性と将来の話をするうちに、違和感が恐怖に変わっていきました」
タローさんが恐怖を感じたのは、女性たちがタローさんの収入に対して抱く、あまりにも高い期待でした。
「交際前のデートなのに、平気で『結婚したら都内の新築マンションに住みたい』『子どもが小さいうちは仕事をやめて専業主婦になりたい』といってくるんです」
タローさんの収入があれば、確かにそれらの願いは叶うかもしれません。しかし、女性たちの言葉の裏には、「金銭的な責任はすべて男性が負うべき」という無意識のプレッシャーが隠れていました。
大黒柱として一生働き続けるプレッシャーから逃げ出した日
婚活相手から新築マンションへの要望を浴びせられ、一度「現実」を見ておこうと、休日に1人でモデルルームへ足を運びました。しかしその見学は、タローさんにとって忘れられない1日となりました。
「8,000万円の住宅ローンのシミュレーションを見たとき、驚愕しました」
もし結婚して女性の希望通りに専業主婦になってもらい、子どもを育て、数千万円のローンを組んだとします。そのすべての支払いは、タローさんただ1人の肩にのしかかるという事実に直面したのです。
「もし僕が仕事のストレスで鬱になったらどうするんだ。病気で働けなくなったら、家族全員が路頭に迷う。そんな重圧を35年間も背負い続けるなんて、僕には絶対に無理だと思いました」
相手の女性はタローさんの年収という「数字」と結婚したいだけであり、タローさん自身のプレッシャーや不安には寄り添ってくれないように感じました。
「稼ぎをすべて家族に吸い取られ、責任だけを押しつけられるくらいなら、1人で気楽に生きるほうがずっと幸せです」
タローさんは、婚活パーティーの予定をすべてキャンセルしました。現在は、プレッシャーのない独身生活を心から楽しんでいるそうです。
マイホーム購入の世帯年収ハードルは「平均863万円」
タローさんのように、十分な収入があっても「大黒柱としての重圧」を避けるために結婚を諦める高年収男性は一定数存在します。
SMBCコンシューマーファイナンスの「婚活・結婚に関する意識・実態調査」には、未婚者が思い描くライフイベントと世帯年収のイメージが示されています。同調査で「マイホームを購入できると思う世帯年収額」の平均は863万円でした。女性の回答に限るとその平均はさらに高く、948万円となっています。
タローさんの年収860万円は、この高いハードルをほぼ1人でクリアできる金額です。しかし、裏を返せば、女性が思い描く「マイホーム購入」や「子どもを1人育てる(平均732万円)」といった高額なライフイベントの費用を、タローさんがたった1人で負担しなければならないという現実を意味しています。
共働きが主流になりつつある現代でも、高年収の男性に対しては「男性が養って当然」という古い価値観がいまだに根強く残っています。その過度な期待と責任の重さに気づき、自ら独身を貫く道を選ぶ高年収男性の姿は、現代の婚活市場のもう一つのリアルといえます。
[参考資料]
SMBCコンシューマーファイナンス「婚活・結婚に関する意識・実態調査」
