退職金と年金試算で知った“老後のギャップ”
違和感が現実味を帯びたのは、会社の退職前説明会でした。提示された退職金見込み額は約1,600万円。さらに年金見込み額は夫婦合算で月22万円程度でした。
「数字を見た瞬間、あれ…と思いました。住宅ローンがまだ残る可能性もあるし、生活費を考えると余裕がない」
総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢夫婦無職世帯の平均支出は月約25.6万円とされています。年金22万円では、平均的な生活水準すら維持できない計算になります。
さらに金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』では、60代二人以上世帯の金融資産保有額は平均2,026万円ですが、中央値は700万円にとどまります。老後資産は「平均ほどは持っていない」世帯が多い現実が示されています。
「うちはどちらかというと中央値側だと思いました」
そう感じた大島さんは、その場で老後不安が現実の数字として迫ってきたといいます。
その後、大島さんは家計を見直しました。住宅ローンの完済時期、退職後の再雇用収入、生活費水準を再計算し、60歳以降も働き続ける前提で老後設計を組み直しました。
「遅いかもしれないけど、現実を知れただけでもよかったと思うしかない」
現在は個人年金保険の追加加入や支出の圧縮も検討しています。
「若い頃から資産形成をしていれば違ったのかもしれません。でも当時は目の前の生活で精一杯でした」
少し間を置いて、大島さんは続けました。
「老後資金は十分じゃない。でも、子どもには教育を受けさせ、家族は普通に暮らせてきた。それも働いた結果なんですよね」
老後の現実は厳しくても、現役時代の努力が無意味だったわけではない――。
「老後、贅沢はできないかもしれません。でも、現実を見て準備するしかないですね」
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