弟夫婦の沈黙と母の葛藤
健一さんは弟夫婦に連絡を取りましたが、返答は曖昧でした。
「母が自分の意思で渡してくれていたものだから」「困っている時に助けてもらっていただけ」
明確な謝罪や説明はありませんでした。
今回のケースでは、母が自己判断能力を保っている限り、資産の使用は本人の自由です。成年後見制度などの対象には直ちには該当しません。
ただし家族の一方が親の生活費を負担している場合、他の家族への資金移転が続くと「扶養負担の公平性」という問題が生じます。民法上、扶養義務は子ども全員にあります。特定の子だけが負担する状況は本来想定されていません。
「母が弟を助けたい気持ちは分かる。でも、僕に何も言わずに続けていたのがつらい」
健一さんは仕送りを止めることも考えました。しかし止めれば母の生活が不安定になる可能性があります。
「怒りというより、裏切られた感覚でした」
最終的に、母の通帳管理は長男が行い、生活費のみを渡す形に変更しました。弟夫婦との関係はぎくしゃくしたままです。
高齢の親を支える家族関係では、「誰がどれだけ負担し、資金が何に使われているか」を共有することが重要です。善意の支援であっても、情報の非対称性が不信感を生むことがあります。
健一さんは言います。
「母を支えたかっただけなんです。こんな形で家族が壊れるとは思わなかった」
親の老後を支える行為は、単なる経済問題ではなく、家族関係の構造そのものを映し出します。支援の形をめぐる認識のズレが、静かに家族の距離を変えていくこともあるのです。
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