(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が年金だけで生活できるかどうかは、子世代にとって切実な問題です。総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月約14.9万円である一方、平均可処分所得は月約12.1万円にとどまり、平均で月約2.8万円の赤字が生じています。家族による仕送りや同居支援が現実的な補填手段となっている家庭も少なくありません。しかし、その支援のあり方をめぐって、家族間の認識が食い違うこともあります。

弟夫婦の沈黙と母の葛藤

健一さんは弟夫婦に連絡を取りましたが、返答は曖昧でした。

 

「母が自分の意思で渡してくれていたものだから」「困っている時に助けてもらっていただけ」

 

明確な謝罪や説明はありませんでした。

 

今回のケースでは、母が自己判断能力を保っている限り、資産の使用は本人の自由です。成年後見制度などの対象には直ちには該当しません。

 

ただし家族の一方が親の生活費を負担している場合、他の家族への資金移転が続くと「扶養負担の公平性」という問題が生じます。民法上、扶養義務は子ども全員にあります。特定の子だけが負担する状況は本来想定されていません。

 

「母が弟を助けたい気持ちは分かる。でも、僕に何も言わずに続けていたのがつらい」

 

健一さんは仕送りを止めることも考えました。しかし止めれば母の生活が不安定になる可能性があります。

 

「怒りというより、裏切られた感覚でした」

 

最終的に、母の通帳管理は長男が行い、生活費のみを渡す形に変更しました。弟夫婦との関係はぎくしゃくしたままです。

 

高齢の親を支える家族関係では、「誰がどれだけ負担し、資金が何に使われているか」を共有することが重要です。善意の支援であっても、情報の非対称性が不信感を生むことがあります。

 

健一さんは言います。

 

「母を支えたかっただけなんです。こんな形で家族が壊れるとは思わなかった」

 

親の老後を支える行為は、単なる経済問題ではなく、家族関係の構造そのものを映し出します。支援の形をめぐる認識のズレが、静かに家族の距離を変えていくこともあるのです。

 

 

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