「子どもに頼る」という前提を捨てる
現実問題として、健太さんはこれ以上仕送りをすれば、自身の家庭が立ち行かなくなる状況。一方で、正雄さんは貯蓄が途絶えれば、やはり危機的な状況に陥る可能性があります。
正雄さんがすべきことは、息子の仕送りに執着することではありません。自身の収入と貯蓄の範囲でいかにやりくりするかを考えること。そして、いざという時にはきちんと国や自治体の制度を利用することです。
正雄さんの貯蓄額がなくなり生活が立ち行かなくなった場合には、生活保護制度の利用を検討できます。申請時には扶養照会が行われますが、子どもに無理な負担を強制する制度ではありません。
自治体によっては、高齢者向けの家賃補助が用意されている場合もあり、住まいを見直すことで、支出を大きく下げられる可能性もあります。
親子関係を壊さないための、現実的で誠実な対処法
老後の生活は、本来、自分の年金と資産を軸に組み立てるべきもの。「子どもが助けてくれるはず」という前提で老後を考えてしまうのは危険です。子どもには子どもの生活があり、経済状況や家族構成も変化するからです。
正雄さんのように、赤字家計ではあるものの貯蓄はゼロではないという場合、今すぐに生活保護の対象になることはないでしょう。だからこそ、地域包括支援センターなどの公的窓口に足を運び、「本当に生活が行き詰まったとき、どのような支援が検討できるのか」を事前に相談し、打ち手を把握しておくことが重要だといえます。
高齢化が進む今後、同じ問題に直面する家庭は確実に増えていくでしょう。その際に大切なのは、「どうすれば自分の生活と親子関係の両方を壊さずに済むか」を冷静に考えることです。
国や自治体の制度を正しく知り、「助けてもらえるはず」という思い込みから一度距離を置いて現実を直視すること。それは親が自分の生活を守るためだけでなく、子どもに必要以上の重荷を背負わせず、親子関係を壊さないための、最も現実的で誠実な第一歩です。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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