「マネーリテラシー格差」が生んだデジタル遺産の相続トラブル
今回のケースの問題点は、Kさんから奥様へパスワードを教えていなかったことだけではありません。
最大の問題は、夫婦間のマネーリテラシーの格差を放置したことにあります。
ネット銀行やネット証券は便利ですが、紙の通帳のような「誰の目にも明らかな証拠」が残りません。そのため、管理者がいなくなった瞬間に、資産はただの「アクセス不能なデータ」へと変わります。
今すぐできる「デジタル終活」の3ステップ
ITエンジニア出身のFPとして、私は以下の3点を推奨しています。
1. 「資産の棚卸し」をアナログで残す
パスワードそのものを書くのが不安なら、「どの銀行・証券会社に口座があるか」のリストだけでも紙で残し、保管場所を共有してください。
2. 投資の「目的」を言葉にする
「この銘柄はあなたの将来のために持っているものだ」と一言伝えておくだけで、遺族の行動は変わります。
3. 信頼できる「第三者のプロ」を介在させる
もし今回、私が奥様と生前から面識があり、Kさんの意志を「通訳」できていれば、大切な資産を安易に売却せずに済んだかもしれません。
大切な資産を引き継ぐために
スマートなデジタル管理は、生きている間は武器になります。しかし一方で、死後は遺族を苦しめる最凶の刃にもなり得ます。
「自分がいなくなっても、この人は迷わずにお金を使えるだろうか?」その視点を持つことこそが、本当の意味での「家族を守る資産形成」ではないでしょうか。
下田 幸彦
青い森FP事務所
代表/CFP®
