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「壊れたから買い替える」という発想は補助金の趣旨に合致しない
補助金とは、あくまでも企業が掲げるビジョンや経営課題に基づいた事業活動を支援するための手段です。したがって、補助金制度の目的と自社の取り組みの目的が一致していなければ、制度を正しく活用することはできません。
企業側のやりたいことが曖昧なままでは、たとえ要件を満たしていたとしても、申請そのものが空回りすることになりかねないのです。
例えば、ある企業から「壊れたエアコンを補助金で買い替えたい」という相談を受けたことがありました。しかし、相談された省エネ補助金は、単なる故障時の代替を支援するものではなく、稼働中の設備を、より高性能な省エネ機器に置き換えることを前提とした制度です。
つまり「壊れたから買い替える」という発想では補助金の趣旨には合致せず、対象外となってしまいます。この制度の目的が省エネの推進である以上、企業側にも「稼働中のエアコンを最新の高効率モデルに更新し、年間の電力消費量を40%削減する」といった、明確かつ合理的な目的意識が求められるのです。
このように、補助金を正しく活用するためには、企業自身が「なぜそれをやるのか」を自らの言葉で語れる状態であることが欠かせません。目的が不明瞭なままでは、たとえ制度が存在していても、的確に提案・申請することすらできません。
実際、私が日々受ける相談の半数ほどは「機械を買いたい」というところから始まりますが、よく話を聞いてみると、「なぜ導入するのか」「どのような課題を解決するのか」といった部分が曖昧なことが非常に多いのです。
ビジョンが明確でなければ、補助金は経営にプラスにならない
目的意識が明確な企業もあります。ある製造業の企業では、加工精度の向上、生産スピードの改善、人手不足の解消といった具体的な経営課題に対し、その解決策として新たな加工機の導入を検討していました。その社長は、設備導入によって期待される成果だけでなく、将来的な受注拡大の見通しまで語ってくれました。
このようにビジョンが明確な企業ほど、申請時の制度選定も的確になり、結果として採択率も高くなる傾向があります。
一方で、目的意識が曖昧な企業は、制度との不一致にすら気づいていないこともあります。
例えば、ある企業が「事業再構築補助金を活用したい」と相談してきました。ところが、実際に行おうとしていたのは、既存店舗の外装の塗り替えや改装、あるいは後継者の準備といったものでした。しかも、その時点で後継者はまだ決まっておらず、計画全体が曖昧なまま話が流れてしまいました。
また別のケースでは、「実家を改装してカフェの2店舗目を出したい」という相談を受けたこともあります。しかし、同一業態での多店舗展開は、新分野展開を重視する事業再構築補助金の趣旨とは明確に異なります。
経営者本人もその点をなんとなく理解していたようでしたが、最終的には「どうすれば申請が通りますか?」「中身はどうでもいいので、とにかく採択されるように書いてください」といった依頼に変わっていきました。ここまで来ると、制度趣旨との乖離どころか、倫理的にも看過できない問題です。
補助金は、企業が未来を切り拓くための公共的な資金であり、決して“制度を利用するための道具”におとしめてよいものではありません。大切なのは、補助金に振り回されるのではなく、自社の未来に向けた明確な投資戦略をもつことです。
その戦略に照らして必要な投資があり、その投資の実行可能性を高める手段として補助金を活用する──この順序と視点がなければ、制度がどれだけ魅力的に見えても、経営にとってプラスにはならないのです。
浮島 達雄
株式会社グロウアップパートナーズ
代表
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