選挙に踏み切った高市首相、想定外の「対象商品限定の消費税ゼロ」発言で金融市場大揺れ…選挙後に想定される「2つのシナリオ」

選挙に踏み切った高市首相、想定外の「対象商品限定の消費税ゼロ」発言で金融市場大揺れ…選挙後に想定される「2つのシナリオ」
(※写真はイメージです/PIXTA)

高市首相が踏み切った解散総選挙ですが、スピーチで飛び出した「対象商品を限定とした消費税2年間ゼロを検討」という趣旨の発言により、金融市場は大揺れとなりました。今後の市場への影響について、様々な角度から考察します。

注目を集めた「解散宣言スピーチ」の内容

高市首相が総選挙の実施に踏み切ったこと自体は、政治日程を前倒しし、不確実性を早期に解消する狙いとして、市場にとって一見「安定材料」に映ります。しかし、実際の市場の反応は、解散宣言スピーチの内容をきっかけに大きく揺れました。

 

注目されたのは、スピーチで言及された「対象商品を限定したうえで、消費税を2年間ゼロにする案の検討を加速させたい」という趣旨の発言です。これが財政出動拡大への思惑を強め、債券売りと円売りを同時に加速させました。選挙で支持を得るための景気刺激策は理解されやすい一方で、財政規律の緩みと受け取られた瞬間、金利や為替に跳ね返るという現実を示した格好です。

債券市場に波及した「政治リスク」

まず債券市場では、日本国債が売られ長期金利上昇の動きが顕著となりました。財政支出が増えるとの見方が強まれば、国債増発への懸念が高まり、需給悪化を織り込む動きが出るのは自然です。

 

より深刻だったのは、この国債売りが米国債にも波及した点です。グローバル投資家は国ごとに債券を完全に切り離して運用しているわけではありません。損益やリスク量の調整のため、「換金しやすい米国債を売る」「同時にリスクを落とす」といった連鎖が起きやすい局面があります。結果として、ベッセント財務長官が懸念を表明する事態となり、日本の国内政治イベントが国際市場の警戒感を強める構図が浮かび上がりました。

為替市場は「金利上昇でも円高にならない」局面へ

為替市場でも反応は明確でした。1月26日の日銀金融政策決定会合と総裁会見の後、円売りが再び勢いを増し、ドル円は159円台まで円安が進みました。

 

金融政策の先行きに対する市場の受け止めに加え、選挙前の財政拡張観測が、「金利が上昇しても円高にならない」形で作用した点が重要です。通常、金利上昇は通貨高要因になり得ます。しかし今回は、「財政への不安」「実質購買力の低下」「当局の円安許容度が読み切れない」といった要素が上回り、円は買われにくい状況にありました。

「介入警戒」と「噂」が相場を揺らす

一方、東京市場では介入警戒から、一時2円以上円高に振れる場面もありました。市場は依然として、「当局がどこかで動く」というヘッドラインに敏感です。

 

さらにニューヨーク市場では、ニューヨーク連銀がレートチェックに動いたとの報道が伝わり、日米協調介入への思惑からドル円の下落が加速しました。日本の当局は事実について言及を避けましたが、こうした情報環境そのものが市場の疑心暗鬼を増幅させます。週明けに153円台をつける場面があったのは、「介入の噂」や「当局シグナルの読み合い」が主導した面が大きいでしょう。

総選挙は「安定材料」になり得るのか

では、総選挙は市場に安定をもたらすのでしょうか。結論から言えば、「選挙を行うこと」自体は不確実性の終点に至るかもしれませんが、「選挙で何を約束するのか」「勝利後にそれをどう設計するのか」が曖昧なままであれば、むしろ変動は大きくなりやすいと考えられます。

 

今回、限定的とはいえ消費税ゼロに言及したことで、市場はすでに財政の将来像を値付けし始めました。税収の穴をどう埋めるのか、対象範囲と期間をどうコントロールするのか、景気押し上げと物価押し上げのバランスをどう取るのか。説明が不十分なままであれば、国債利回りには上昇圧力が残り、円は「不安定な安さ」を抱え続ける可能性があります。

 

加えて、大手メディアの情勢調査では、自民党が衆議院議員選挙で単独過半数を確保するとの見方も強まっています。これは市場に安心感を与える一方で、政策の実行可能性を高め、財政拡張が現実味を帯びるという別の評価も生みます。

選挙相場で意識すべき三つの視点

選挙期間中の相場は、主に三つの材料で振れやすくなります。

 

第一に、財政政策のメッセージです。給付、減税、補助金といった言葉が出るたびに、「規模」「財源」「時限性」が問われ、答えが見えないほど債券は売られやすくなります。

 

第二に、当局の円安対応です。介入は水準よりもスピードが焦点となり、急変局面では口先介入や実弾介入への警戒が高まります。

 

第三に、海外金利との相互作用です。日本発の債券売りが米国債に波及する局面では、ドル円は国内要因だけでなく、米金利の動きで想定以上に振れる可能性があります。

選挙後に想定される2つのシナリオ

選挙後には、2つのシナリオが考えられます。与党が安定多数を確保した場合、短期的には不確実性低下で落ち着きやすい一方、「財政拡張が現実味を帯びる」ことで国債には売り圧力が残る可能性があります。

 

逆に、与野党が拮抗する結果となり、政策運営が不安定になれば、政治の不透明感そのものがリスクプレミアムとなり、円安と債券安が同時に進みやすくなります。市場が本当に求めているのは、勝敗そのものではなく、「財政の枠」と「金融政策との整合性」が示されるかどうかです。

「気前の良さ」が先行し、設計が後回しになれば…

結局のところ、高市首相の決断が市場に安定をもたらす条件は明確です。消費税ゼロの検討を進めるのであれば、対象の定義、期間、代替財源、そして出口戦略をセットで示すことが不可欠です。

 

選挙向けの「気前の良さ」が先行し、設計が後回しになれば、債券売りと円売りは一過性の反応では終わりません。政治が時間軸の不確実性を減らしても、政策の中身が不透明なままであれば、市場は安定ではなく、ボラティリティで応えるでしょう。今回の値動きは、その冷徹な現実を浮き彫りにしています。

 

 

藤田 行生
SBI FXトレード株式会社
代表取締役社長

 

※ 本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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