「会社経営の行き詰まり→社長の破産」を回避可能に…2026年施行予定「早期事業再生法」の概要【司法書士が解説】

「会社経営の行き詰まり→社長の破産」を回避可能に…2026年施行予定「早期事業再生法」の概要【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社経営には波があり、いつも順風満帆というわけにはいきません。しかし「いよいよダメ」という局面になったとき、経営者自身の破産は避けられないのでしょうか? ここでは、会社倒産と代表個人の債務整理の関係のほか、2026年施行予定の「早期事業再生法」の概要を見ていきましょう。司法書士の加陽麻里布氏が解説します。

手遅れになる前に会社を立て直す…「早期事業再生法」とは?

会社経営において、資金繰りや業績の悪化といった「経営の行き詰まり」は決して珍しいものではありません。そのようななか、多くの経営者が恐怖を感じるのが、「会社が倒産したら、自分(代表・社長)も破産しなければならないのか?」という点です。

 

2026年に施行が予定されている「早期事業再生法」は、こうした「手遅れになる前段階」で会社を立て直す、新たな制度として注目されています。

 

この新制度を起点に、会社倒産と代表個人の債務整理の関係について、順を追って見ていきましょう。

 

(1)制度の概要 

 

早期事業再生法(仮称)は、経営が悪化し始めた比較的早い段階で、会社の事業再生を図ることを目的とした新しい法制度です。従来の民事再生や破産と比べると、

 

●まだ債務超過や支払不能に至っていない段階

●事業自体には再生可能性がある段階

 

での利用を想定している点に特徴があります。

 

(2)施行が検討されている背景 

 

この制度が検討されている背景には、次のような事情があります。

 

●民事再生は「遅すぎる」ケースが多い

●破産に至る前に、選択肢が事実上なくなっている

●経営者が「倒産=破産」と考え、早期相談をためらう

 

結果として、本来は立て直せたはずの企業が、破産以外の選択肢を失ってしまうという問題が指摘されてきました。

 

(3)民事再生・破産との違い 

 

早期事業再生法は、あくまで「再生」を前提とした制度です。

 

●破産:清算が目的(事業は終了)

●民事再生:法的再生だが、開始時点で相当程度悪化していることが多い

●早期事業再生法:悪化初期での再生を想定

 

という位置づけになると考えられています。

早期事業再生法は「使える段階かどうか」の見極めが超重要

次のような状況にある場合は「早期事業再生法」の利用をお勧めすることができます。

 

○ 一時的な資金繰り悪化にとどまっている

○ 事業モデル自体は成立している

○ 金融機関との関係が完全には壊れていない

○ 経営者が早期に相談できている

 

次のような状況にある場合は「早期事業再生法」の利用はお勧めできません。

 

× すでに支払不能に陥っている

× 長期間の粉飾・資金流用がある

× 主要な取引先・金融機関との信頼関係が崩壊している

× 事業自体に継続性がない

 

この制度は万能ではなく、「使える段階かどうか」の見極めが非常に重要になります。

「早期事業再生法を使えない場合」の立て直し手段

早期事業再生法が使えない場合でも、直ちに破産しかないわけではありません。次のように、会社の状況に応じた選択肢があります。

 

●私的整理(リスケジュール・任意交渉)

●事業譲渡による再編

●第二会社方式

●民事再生

 

重要なのは、「どの手続が使えるか」よりも「いつ相談したか」です。

「立て直しが難しい場合」の対処方法(倒産手続)

事業の継続が現実的でない場合には、会社としての倒産手続を選択することも、経営判断のひとつです。

 

●破産手続

●特別清算(条件が整う場合)

 

倒産は「失敗」ではなく、法的に整理して次へ進むための手段でもあります。

会社が倒産した場合、代表(社長)も債務整理が必要か?

多くの経営者にとって「会社が倒産した場合、代表(社長)も債務整理が必要か」という点が、最大の関心事だといえます。代表の債務整理が必要になるケースと、そうはならないケースをそれぞれ見ていきます。

 

(1)代表の債務整理が「必要になるケース」 

 

●金融機関借入に個人保証をしている

●代表個人名義の借入がある

●会社債務を個人で肩代わりしている

 

日本の中小企業では、代表者の個人保証が付いているケースが多いため、会社倒産と同時に、代表個人の債務整理が必要になることは珍しくありません。

 

会社が融資を受ける際は、基本的に代表者が連帯保証人となるケースが多いです。この場合、会社の債務整理を行っても、代表個人の連帯保証債務はなくなりません。

 

会社の破産となると連帯保証額も巨額となるため、基本的には代表も自己破産または個人再生で債務整理を行うことになる場合が大半です。

 

(2)代表の債務整理が「不要なケース」 

 

次のような場合は、会社が倒産しても、代表個人は破産せずにすむ可能性があります。

 

●個人保証が付いていない

●代表個人の借入がない

●会社と個人の資産・債務が明確に分離されている

 

つまり、会社の借金に対して、代表が責任を負っていないというケースです。連帯保証もないため、代表個人が債務整理を行う必要はない状況となります。

事前対策…会社倒産時、「自分の資産」まで失わないために

重要なのが、問題が起こる前の「事前対策」です。

 

●個人保証の内容を把握しておく

●会社と個人の資金を明確に分ける

●安易な追加保証・連帯保証を避ける

●早期に専門家へ相談する

 

倒産時に慌てて動いても、選択肢はほとんど残っていません。資産を守れるかどうかは、「倒産前の行動でほぼ決まる」ということを、覚えておきましょう。

「倒産」「破産」以外の選択肢を持てる可能性

早期事業再生法は、「倒産か、破産か」という二択しかなかった状況を変える可能性を持つ制度です。

 

しかし、どの制度を使うにしても、早期の判断と専門家への相談がなければ意味を持ちません。会社が苦しいときこそ、「会社の問題」と「自分個人の問題」を切り分けて考えることが、経営者自身を守る第一歩になります。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

 

 

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