離婚後は「経済的な自立」が困難
和彦さんからの“離婚の申し出”に対し、美佐子さんはすぐに応じることができませんでした。経済的な問題が大きくのしかかっていたからです。
「年金は夫の会社員時代の記録がほとんどで、私は専業主婦期間が長かった。仮に離婚して年金分割をしても、厚生年金の分割分は月数万円程度にすぎず、生活を支えるには心もとない額でした」
現在、夫婦が住んでいるのは築30年の分譲マンション。離婚すれば持ち家の資産分与や売却も検討しなければならず、美佐子さんにとって“経済的に自立する”ということは容易ではありません。
「自分の人生を、自分で決めたい」と思いながらも、それが現実的には叶いにくい——。美佐子さんは、そんな“希望と現実のギャップ”に直面しています。
厚生労働省によれば、夫婦が離婚した際に「年金の分割請求」ができるのは、会社員や公務員として厚生年金に加入していた配偶者が対象です(いわゆる第2号被保険者)。ただし、分割できるのはあくまで“婚姻期間中の厚生年金部分のみ”であり、国民年金(基礎年金)や婚姻前・婚姻後の分は対象外です。
分割後の金額は、通常は2分の1ずつになりますが、専業主婦側にとっては月数万円の増額にとどまることも多く、「離婚後の生活を単独で支えるには不十分」というケースも少なくありません。
夫婦とは、互いに「人生の半分以上を共有する存在」です。けれど定年を機に、思いがけず“価値観のずれ”が浮き彫りになることもあります。
「夫は“自由になりたい”と言った。でも、私は“2人でこれからの老後を支え合っていけたら”と思っていた。そのすれ違いは、もしかしたらずっと前から始まっていたのかもしれません」
いま、美佐子さんはひとりで家計簿を見つめながら、ゆっくりと人生の“次の選択肢”を模索しています。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
