(※写真はイメージです/PIXTA)

宗教法人課税をめぐる税務行政の姿勢が、大きな転換点を迎えているといいだろう。宿坊、駐車場、不動産、物品販売、さらには法人格の名義貸しに至るまで、宗教法人の経済活動は多様化・高度化し、課税当局と検察当局は連携して実態解明と是正に乗り出している。かつて「非課税の聖域」と呼ばれた宗教法人課税はいま、制度の根幹を問い直す段階に入ったのかもしれない。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

なぜ「宗教法人への課税」が強まっているのか

「お寺や神社は、税金がかからない」――。多くの人が、そんなイメージを抱いているのではないだろうか。

 

しかし実際には、宗教法人であっても、すべての収入が非課税になるわけではない。布施や賽銭など、信仰行為と不可分の収入は原則として非課税とされる一方、宿泊業、駐車場経営、不動産賃貸、物品販売など、事業性が認められる活動については、一般企業と同様に法人税の課税対象となる。

 

それでもなお、「宗教法人=非課税」という印象が根強く残っているのは、課税対象と非課税対象の線引きが一般に知られてこなかったこと、そして長らく宗教法人に対する税務調査が極めて慎重に行われてきたという歴史的背景があるようだ。

 

だが、その常識はいま、大きく揺らぎ始めている。

 

宿坊の観光ビジネス化、境内地を使った駐車場経営、不動産投資への参入、さらには宗教法人格の売買や名義貸し――。こうした宗教活動の枠を超えた経済活動が目立つようになり、国税当局は、宗教法人に対する課税姿勢を大きく転換しつつある。

 

かつて「触れてはならない領域」とされてきた宗教法人課税は、宿坊・不動産・駐車場・名義貸しなどを巡る脱法的スキームの横行を背景に、いまや国税当局と検察当局が連携して取り組む税務行政の最前線へと位置づけが大きく変わりつつあるようだ。

「修行の場」から「観光拠点」へ――宿坊の変質

もともと宿坊は、修行僧や遠方からの参拝者が身を休めるための、簡素な宿泊施設として運営されてきた。宗教活動の延長線上にある存在であり、そこに強い営利性は想定されていなかった。

 

しかし近年、その姿は大きく変貌している。

 

インターネット予約サイトへの掲載、ホテル並みの客室設備、精進料理を売りにした観光向け宿泊プラン――。一般観光客を積極的に取り込み、実態としては旅館やホテルとほとんど変わらない営業を行う宿坊が、全国各地で増えている。

 

税務当局が問題視するのは、こうした「宗教活動の補助」という枠を明確に超えた営業実態だ。

 

実務上は、

 

宗教行為の一環 → 非課税

一般客向け宿泊業 → 課税

 

という線引きがなされている。

 

宿泊料金の設定水準、予約形態、利用者層、施設の設備内容、広告宣伝の方法などを総合的に勘案し、「一般観光客向けの継続的営業」と判断されれば、法人税課税に踏み切られる。

 

2014年12月8日の国税不服審判所裁決では、墓地管理料収入について、「宗教活動の補助的行為の範囲を超え、反復継続性や対価性など事業性が認められる場合には、法人税の課税対象となる」との判断基準が具体的に示された。

 

この考え方は、その後の宿坊課税の判断枠組みにも踏襲され、観光色を強めた宿坊に対する税務調査が本格化していく流れを後押しする一因となった。

境内駐車場は「参拝支援」か? それとも「駐車場業」か?

都市部の寺社で急増しているのが、境内地を活用した駐車場経営である。

 

参拝者向けの無料駐車場にとどまらず、時間貸しや月極駐車場として一般開放し、恒常的な収益を上げるケースも珍しくない。

 

この点について、国税不服審判所は1993年7月9日の裁決で、寺院が境内地を時間貸し駐車場として運営する行為は「駐車場業」に該当し、収益事業として法人税課税の対象となると判断した。

 

裁決は、「参拝者の利便性確保という宗教活動補助の域を超え、収益獲得を目的とした事業性が明らか」と指摘。以後、境内地の時間貸し・月極駐車場については、原則として課税対象とする実務基準が定着している。

 

現在、都市部の寺社では境内駐車場が税務調査の重点対象とされ、過去分にさかのぼって課税される例も少なくない。

お守りは非課税、線香は課税…意外に厳格な線引き

宗教法人による物品販売についても、税務実務では比較的明確な線引きがなされている。

 

おおむね次のような区分が定着している。

 

お守り・お札・おみくじ → 喜捨性が強い → 非課税

絵はがき・写真帳・暦・線香・ろうそく → 一般物品 → 課税

 

税務調査では、商品の性質に加え、価格表の掲示、定額販売の有無、在庫管理の実態、売上管理方法、会計処理の内容まで詳細に確認される。

 

一般商取引と同様の販売形態が認められた場合、宗教用物品であっても、課税対象と判断されることが多い。

宗教法人格の「売買」と名義貸し、裁決と刑事摘発が否定

税務当局と検察当局が、特に警戒を強めているのが、宗教法人格の売買や名義貸しを利用した脱法的スキームだろう。

 

実体の乏しい宗教法人を事実上買収し、形式上の住職を据え置いたまま、不動産投資、駐車場経営、宿泊事業などを展開。得られた収益を「宗教活動収入」として非課税処理する――。

 

こうした手法について、国税不服審判所は2017年以降の複数の裁決で、実態支配者が宗教法人ではなく外部事業者である場合、宗教法人の非課税性は否定されるとの判断を示している。

 

名義上は宗教法人であっても、

 

●誰が資金を拠出しているか

●誰が事業運営を実質的に指揮しているか

●収益の帰属先はどこか

 

といった実態が重視され、形式的な法人格は通用しない。

 

実際、不動産会社経営者らが宗教法人を事実上支配し、高額不動産の賃料収入を非課税処理していたとして、法人税法違反容疑で刑事摘発された事件も発生している。国税と検察は、これらを「宗教法人制度を悪用した組織的脱税」と位置づけ、厳格な対応を続けているようだ。

宗教法人を使った「相続税逃れ」にも司法の壁

宗教法人を利用した相続税回避に対しても、明確な司法判断が積み重なっている。

 

住職や関係者が、生前に個人資産を宗教法人名義口座へ移転し、相続財産から除外しようとした事案について、国税不服審判所は、「形式的な名義移転にすぎず、実質的には贈与に該当する」として、贈与税課税を適法と判断する裁決を複数示している。

 

誰が資金を管理・支配しているか、資金の使途はどうなっているかといった実態が重視され、名義だけを移しても課税を免れることはできないという判断のようだ。

「信教の自由」と「課税の公平」の交差点

宗教法人に対する課税強化は、信教の自由との緊張関係を常にはらんでいると言っていいだろう。

 

税務当局も、純粋な宗教活動そのものへの介入は極力避ける姿勢を維持している。だが一方で、一般企業と同様の経済活動を行いながら、宗教法人格を盾に課税を免れる行為については、租税公平主義の観点から看過できないとの認識が急速に広がっている。

 

ある国税OB税理士は、「宗教法人であっても、経済主体としての側面を持つ以上、課税の公平性は確保されなければならない」と語る。

「非課税の聖域」は、もはや過去のもの

観光化、都市化、資産運用。宗教法人を取り巻く環境は、この数十年で大きく変化した。それに伴い、税務行政のスタンスもまた、確実に変わりつつある。

 

もはや「非課税の聖域」という言葉は、現実を正確に言い表すものではない。宗教法人に対する課税の網は、静かに、しかし確実に絞り込まれつつあるのかもしれない。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

 

 

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相続税の「税務調査」の実態と対処法

 

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