「親子だから何でも分かり合える」と思っていたが…
「“私たち親子は、もう終わり”――そう言われた時は、本当に頭が真っ白になりました」
そう語るのは、東京都内のUR団地に暮らす76歳の中村美津子さん(仮名)。夫に先立たれて10年、年金月13万円の一人暮らしです。
毎月数回、自宅に顔を見せてくれていた一人娘・遥さん(45歳)から、ある日突然「もう連絡しないでほしい」と告げられたといいます。
「確かに、最近は些細なことでぶつかることも多くなっていました。娘は仕事が忙しく、私の話にうんざりしていたのかもしれません。でも、まさか絶縁されるなんて…」
美津子さんは、これまで「親子だから何でも分かり合える」「いざとなれば助け合うのが家族」と信じて疑わなかったといいます。
一方、遥さんは違いました。
「母はずっと“親なんだから、何を言ってもいい”という態度でした。でも私は、子ども時代からずっと、否定されてばかりだった。結婚相手にも、仕事にも口出しされてきて……それが限界だったんです」
遥さんにとって、「親であること」が免罪符のように使われることが、何よりも苦しかったといいます。
高齢の親と中年期以降の子どもの関係性は、経済的・精神的に複雑です。
多くの高齢者は年金や貯蓄で自立した生活を送っている一方で、病気や要介護状態になると、やはり頼れるのは家族。親子関係が悪化していても、いざというときの連絡先や身元保証人を「子」にせざるを得ない現実もあります。
「娘に頼らずに生きていくしかないと分かっているけど……この年になると、ひとりでいるのはやっぱり寂しいです」
そう語る美津子さんは、最近は近所のサロンや地域の見守りサービスを利用しながら、少しずつ新しい人間関係を築き始めているといいます。
