「通帳見たら、残り30万円って…」
「もう、俺の人生って何なんだよ……」
そうつぶやいたのは、都内在住の会社員・高井昌弘さん(仮名・59歳)。企業の管理職として働き、年収はピーク時でおよそ820万円。部下からの信頼も厚く、仕事一筋でここまでやってきました。
「正直、小遣いが少ないことは不満でしたよ。月2万5,000円。飲み会も控えて、昼食は毎日コンビニのおにぎり2個。妻に文句を言ったこともありましたが、“教育費があるから”の一点張りで」
3年前に住宅ローンを完済し、子どもも無事に独立。少しは生活に余裕ができたと思い、ふと妻に「貯金って、いまどれくらいあるの?」と尋ねたところ――通帳を渡された高井さんは、ページを開いて絶句します。
「残高、30万円ですよ。は?と思いました。あれだけ稼いで、家族のために削ってきて、これが現実かと……」
妻は専業主婦で、30年以上にわたって家計を一手に管理してきました。高井さんは給与のすべてを妻に渡し、自分の小遣いも相談のうえで決めてきたといいます。
「教育費は確かにかかりました。塾代、私立中高、大学、留学費用……“子どものために”と思って納得していたつもりでした。でも、まさか老後の備えがゼロに近いとは」
家庭によっては、教育費が家計に与える影響は非常に大きくなります。
「うちは2人とも私立でしたから、それだけで4,000万円以上。奨学金は子どもに背負わせたくないって、妻の強い意志もあったので……」
貯蓄がほとんどないと分かった高井さんは、60歳を前に「定年退職」の二文字が急に現実味を帯びてきたといいます。
「今までは“退職後は少し休んでから再就職”なんて考えていましたが、そんな余裕ないですね。会社に頼み込んで、65歳までの契約社員としての延長を希望しました」
