歓送迎会の翌日、「テーブルの上に置かれた封筒」
「まさか自分が“置き手紙”をされるとは思っていませんでした」
そう語るのは、都内在住の元大手メーカー勤務・佐藤浩一さん(仮名・60歳)。38年間勤め上げた会社を退職し、晴れて「第二の人生」が始まるはずの朝、テーブルの上に置かれていたのは、妻からの手紙でした。
「お疲れさま。そして、さようなら。私はもう、浩一さんと一緒に“老後”を過ごすつもりはありません」
封筒には、離婚届が同封されていました。
佐藤さんは、現役時代の年収が約1,200万円。退職金は3,000万円、企業年金もあり、老後資金にもそれなりの備えがありました。表面的には「理想的な老後設計」ができていたはずです。
ところが、妻からすると「もう限界だった」とのこと。手紙には、こんな言葉が綴られていたといいます。
「お金の話しかしてこなかった。老後のことも、“年金がいくらで、資産がいくら”ばかり。私は、そんな人生が虚しくなったんです」
確かに、振り返ってみれば夫婦の会話は年々減り、「家の中にいても“空気のような存在”になっていた」と佐藤さんは言います。
「老後資金の確保」はできていたものの、「心の距離」はいつの間にか修復不能になっていたのです。
厚生労働省『人口動態統計(令和6年概況)』によると、年間の離婚件数は18万5,904組。そのうち同居期間20年以上の熟年離婚は年間4万686組にのぼり、全体の約2割を占めています。
また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には65歳以上の単身高齢者が896万人に達するとされています。“老後をひとりで過ごす”ことが、決して珍しい選択肢ではなくなっているのです。
