(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進む日本において、資産防衛の最大の敵は「相続税」だと思っていませんか? 実は、多くの方が直面し、相続税以上に頭を抱えるのが、認知症による「資産凍結」という恐怖です。今回は、4,500万円もの十分な老後資金を持ちながら、親子の遠慮とたった一度の転倒事故が引き金となり、経済的危機に陥ったご家族の事例をご紹介します。

なぜ「家族」でも引き出せないのか?【FPが解説】

なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。法的な観点からいえば、銀行の対応は正当であり、むしろ顧客の財産を守るための措置です。預金契約はあくまで「銀行」と「本人」との契約だからです。

 

実は、2021年に全国銀行協会から「認知症の方の預金引き出しに関する指針」が出され、医療費や介護費など「本人の利益」が明らかな場合に限り、例外的に親族による引き出しを柔軟に認める動きは広まっています。

 

「それなら安心だ」と思われるかもしれません。しかし、現場の実態はそう甘くはありません。

 

この対応はあくまで「特例」であり、権利ではありません。実務上は以下のような厳しいハードルが課されることが一般的です。
 

1.    使途の厳格な証明: 請求書などを提示し、窓口から病院や施設へ「直接振り込み」に限られることが多い(自由な現金引き出しは不可)。
2.    相続人全員の同意: 「将来の相続トラブル」を避けるため、銀行から「推定相続人全員(今回の場合は健二さんの兄弟など)の同意書と印鑑証明書」を求められるケースがある。
3.    高額出金の制限: 数百万円単位の入居一時金など、資産が大きく動く場合は「保全の必要性」から、やはり成年後見制度の利用を促される可能性が高い。

 

つまり、「窓口で頼み込めばなんとかなる」ものではなく、毎回膨大な書類と審査が必要になるのです。結局、健二さんのように「事実上の凍結状態」に陥り、後見人を選任せざるを得ないケースがあとを絶ちません。

 

後見人がつけば、資産は裁判所の監督下で厳格に管理され、家族のために自由にお金を使うことは難しくなります。また、専門家が後見人になれば月々の報酬も発生し続けます。

 

次ページ「頑固な性格」に対する正解

※本記事は、筆者の経験に基づき、守秘義務の観点から事例を一部修正・変更して作成しています。また、本記事で紹介した対策は一例であり、個別の状況や資産内容等によって最適な判断・選択は異なります。金融機関ごとの具体的な手続き方法については各窓口へ、ご家庭に合った対策の選び方については専門家へ、それぞれご相談されることをおすすめします。

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