「日本の不動産はバーゲンセール」
これが日本の地方リゾート、温泉街の現実だろう。地方にも確実に及んでいる中国からの波。だが、男性職員は最後に少し寂しそうにも語った。2023年、同市役所に訪れた中国人経営者が放った言葉が今でも忘れられずにいるという。
「中国人からすると、日本の不動産はどこもバーゲンセールのようなものですね」
バーゲンセール――。おそらく、本当にそうなのだろう。取材班は、中国資本による地方リゾート、温泉施設などの買収が、現在どこまで進んでいるのか、各地の状況を徹底的に探ることにした。まず、都道府県などが所有する旅館業法の許可施設一覧を、情報公開請求で入手。施設一覧には、施設名や住所、許可年月日に加え、施設を所有する個人名や法人の代表者名も記載されている。この名前を基に中国資本とみられる施設を抽出した。
だが、これらの名前だけでは所有者が本当に中国人かどうかは分からない。そこで運営会社の土地、建物を登記簿謄本で調べた。謄本には、運営会社の代表者や土地、建物の所有者の住所が記されている。その住所が中国であれば、中国資本であると判断できるわけだ。取材班が今回、取得した登記簿謄本は計300件以上に上った。さらに取材で確認した買収事案も含めて集計した。時期は、買収が特に増えた2010年以降のケースを原則、調査対象とした。その調査結果が、下記の図表2である。
少なくとも中国資本による主な買収は、全国39自治体の67施設に及ぶことが分かった。箱根や伊豆など人気観光地の施設がずらりと並んだ。それだけではなく、新潟県阿賀町[あがまち]や石川県白山[はくさん]市、鳥取県三朝町[みささちょう]などの、知る人ぞ知る地方の観光地も目立った。

