前回は、二次相続対策のために収益不動産を活用する方法について説明しました。今回は、事業承継で問題となる点を、具体的な例を挙げて見ていきます。

後継者教育と合わせて事業承継を検討し始めたが・・・

Dさんは若い頃、地方から東京に出てきて一代で会社を築き上げた経営者です。業績は順調ですが75歳になり、そろそろ事業承継を考えています。

 

「まだまだやる気はあるのですが、最近、体力が落ちてきたことを感じたのがきっかけです。いつ何時、私が倒れて相続が発生するかもしれません。そのとき、相続税の支払いで会社の存続に困るようなことにならないようにしておきたいと考えるようになりました」そうDさんはおっしゃいます。

 

家族は、妻と長男、長女です。いずれも自社の役員、社員で、特に長男は将来の後継者にと考えています。ただ、Dさんから見てまだまだ経営を任せられるほどの力量はなく、経営者としての教育も含め事業承継を進めるつもりです。その途中で突然、相続が発生したら大変なので、万が一に備えて対策を講じ、妻や子どもたちが困らないようにしておきたいというのがDさんの意向です。

 

資産は自宅のほか、自分の会社に貸している事務所ビルと倉庫、そのほかアパート、賃貸マンションがあります。金融資産を含めた資産の総額は、相続税評価額で7億円。一方、借入金も2億円ほどあり、正味の遺産額は5億円です。

 

こうした資産から得られる賃料などの年間収入は5000万円、維持管理費や借入金の返済が4000万円ですが、そこから固定資産税や所得税、住民税、社会保険料を支払うとほとんど手元にお金が残りません。資産のキャッシュフローはほぼゼロなのです。

万が一、明日相続が発生してもよい状態にしておく

相談を受けた私たちから見た課題は、Dさんがすでに75歳となり時間があまりないということです。もし万が一、明日相続が発生してもよい状態にしておく必要があります。

 

また、資産からの収入の多くは、自社ビル・自社倉庫(個人名義)からの収入で、そのほかの資産がお金を生んでいません。こうした課題をふまえ、相続税を限りなくゼロに近づけ、かつ資産そのもので稼ぐことを目標としました。具体的には、収益力のある収益不動産を新たに取得するよう提案しました。

 

実際の展開については、次回詳しく見ていきましょう。

本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
〈税務の取扱に関する留意点〉
本連載の内容は、平成27年4月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後の税制改正等により税務の取扱等が変わる場合もありますので、記載の内容につきましては将来にわたって保証されるものではないことにご注意ください。個別の税務取扱い等については、税理士や所轄税務署等にご確認されることをお勧めします。

余命一カ月の相続税対策

余命一カ月の相続税対策

福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

突然やってくる“その時”、わずかな時間でできる対策は限られています。しかし、正しいノウハウをもってすれば、相続税対策は2週間程度で完了、相続税をゼロにでき、それどころか、子孫に受け継いだ資産がその後も増え続けて…

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