「父はプライドが高いんです」
年金月17万円という額は、数字だけ見れば極端に少ないわけではありません。それでも、生活インフラの弱い場所では「移動」「暖房」「住まいの維持」が家計と体力を同時に削ります。
「父はプライドが高いんです。弱っているところを見せたくない。だから“困っている”とは言わない」
美香さんは、玄関先の郵便物の山を見て理解しました。
支払いの通知、検診の案内、町内会の回覧——。暮らしを回す情報が、本人の手の届かないところで滞っている。
父はぽつりと言いました。
「お前が来るほどじゃない。大げさだ」
けれど、その言葉とは裏腹に、部屋には「一人暮らしの限界」がにじんでいました。
住み替え」か「支援導入」か——現実的な落としどころ
その夜、美香さんは父と“選択肢”を整理しました。感情論ではなく、「続けられる形」に落とすためです。
●地域包括支援センターに相談し、見守り・生活支援につなげる
●通院手段(送迎・訪問診療の可否)を確認する
●暖房費を削らない仕組み(定期配送や支払い方法)を整える
●住まいの修繕計画と費用を見える化する
●必要なら、近隣の利便性が高い場所への住み替えも検討する
「移住を否定したいわけじゃない。ただ、 “我慢”の上に成り立つ暮らしは続かないと思いました」
美香さんはそう振り返ります。
老後の暮らしは、資産の“総額”だけでは測れません。生活インフラ、住まいの維持、医療へのアクセス、そして「助けを呼べる仕組み」が揃って初めて、安心に近づきます。
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