「相対的貧困」の定義とは?
「はじめに」でも触れましたが、2015年に出版された『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』の著者である藤田孝典氏は、近い将来、高齢者の9割が生活保護レベルの収入で暮らす、あるいはその恐れがある「下流老人」に転落すると指摘していますが、実際に高齢者の「相対的貧困率」は徐々に上がっています。
最初に、相対的貧困の定義について説明しておきましょう。これは、「等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が、全人口の中央値の半分未満であること」です。これだけ読むと意味が分かりづらいため、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんという5人の集団を例に説明します。
今、Aさんの年収が2000万円、Bさんが400万円、Cさんが300万円、Dさんが200万円、Eさんが100万円だったとします。5人の「平均収入」は、「(2000万円+400万円+300万円+200万円+100万円)÷5人」、すなわち600万円となりますが、この数字は1人だけ年収の高いAさんによって引き上げられたもので、実態とはかなりかけ離れています。そこで、5人のうち真ん中の順位(=3位)にあたるCさんの300万円を、「中央値」とし、この値を基準に貧困率を考えます。
世帯人数による「暮らしやすさの差」とは?
「世帯の可処分所得」とは、収入から税金や社会保険料などを引いた額です。いわゆる「手取り収入」と考えればいいでしょう。また、これを「世帯人数の平方根で割る」のは、世帯人数による暮らしやすさの差を調整するためです。たとえば、年収800万円の4人家族と、年収200万円の一人暮らしを比べた場合、どちらも1人当たりの年収は200万円になります。
しかし、4人暮らしの方が水道光熱費や住居費などが割安になるケースが多く、生活はずっと豊かになります。その差を調整するために、世帯人数の平方根で割っているわけです。
ちなみに、前出のA~Eさんの場合、中央値であるCさんの年収は300万円です。この半分、すなわち150万円が「貧困線」とされ、これ以下の収入しか得られていない人は貧困層ということになります。
【図表】 相対的貧困率