「節目なんだから帰りなさい」と言えなくなった理由
成人式に出席しないという選択について、美智子さんはこう話します。
「『うちの子、成人式には帰ってこないんです』と言うと、だいたい驚かれます。『もったいない』『せっかくなのに』と言われることもありますね」
周囲からの反応に戸惑いながらも、美智子さんは少しずつ「家庭ごとに事情は違う」と割り切れるようになったといいます。
娘の詩子さんは、留学を控えています。その費用についても、「できる限り自分で出したい」と考えているそうです。
「教育費は、すごくかけてもらったから。留学費用は、少しでも自分で賄いたい」
そう話し、詩子さんは中学受験塾でのアルバイトを続けています。時給が比較的高く、責任もある仕事ですが、その分、学業との両立は簡単ではありません。
「バイトも忙しい時期だから、自分の成人式で帰っている暇なんてないの」
そう娘から聞いたとき、美智子さんは複雑な気持ちになったといいます。当初、美智子さんはこう考えていました。
「人様も大事だけれど、成人式は節目なんだから、帰ってきなさい」
しかし、学業に加えてアルバイトにも力を入れ、留学の準備を進める娘の姿を見ているうちに、その言葉を口にできなくなりました。
「自分の将来のために、今できることを一生懸命やっている。その姿を見たら、無理に帰ってこいとは言えませんでした」
娘自身も、地元に戻らない代わりに、別の形で節目を過ごす予定だと話していました。
「中高の同級生も、だいたい東京に来ているし。こっちでランチ会でもしようって言ってるの」
成人式当日に式典に出席しなくても、友人と会い、それぞれの近況を語り合う——詩子さんにとっては、それも一つの区切りでした。
4人に1人が「成人式にも同窓会にも出ていない」
株式会社アスカネットが行った調査によると、成人式関連(振袖・美容・写真撮影など)にかけた総費用は「10万~20万円未満」が最も多く、次いで「5万~10万円未満」「20万~30万円未満」が続きました。多くの家庭が、成人式を迎えるにあたって10万~30万円程度の支出を想定していることが分かります。
また、女性向け転職サイト「女の転職type」を運営する株式会社キャリアデザインセンターが働く女性337人を対象に行った「20歳について」のアンケートによると、成人式やその後の同窓会にいずれかに参加した人は75.3%でした。一方で、24.6%は「どちらも参加していない」と回答しており、4人に1人は成人式にも同窓会にも出ていないことが分かります。
参加者の約8割は「楽しかった」と回答していますが、逆に言えば2割は「楽しくなかった」と感じる人も。楽しくなかった理由として最も多かったのは、「親しい人や話せる人が少なかった」(41.5%)で、「形式的な会で面白くなかった」(37.7%)と続きました。
成人式の形は一つではない
美智子さんは、今の心境をこう話します。
「みんなと同じ形で祝わなくても、大人になること自体は変わらない。娘なりの考えを尊重できてよかったと思っています」
成人式は通過点の一つにすぎません。
どのような形で迎えるかは、家庭ごとに違っていてもいい——青木さん一家の選択は、そんな現実を静かに映し出しています。
[参考資料]
株式会社キャリアデザインセンター「20歳について」のアンケート
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
