母に仕送りし続けた長男の“10年”
「まさか“あんなこと”を言い出すなんて、思いもしませんでしたよ。今さら何を…って」
そう語るのは、都内在住の会社員・松岡伸一さん(仮名・57歳)。10年前、父の死をきっかけに、母(84歳・仮名)の一人暮らしが始まりました。
母には厚生年金の受給資格がなく、年金は国民年金のみ。受給額は月7万円ほど。家賃や光熱費、食費をまかなうには足りず、伸一さんは「長男としての責任」として、毎月3万円の仕送りを続けてきました。
「母の住まいは築50年の団地。エレベーターもなくてね。冬場は灯油代もかかるし、食費も抑えているみたいだったから、年2回は少し多めに振り込んだり、惣菜や日用品を送ったりしていました」
弟夫婦(ともに50代後半)は地方で自営業を営んでおり、「うちは手一杯」と言い続けてきたそうです。
そんなある日、弟から届いたのは思いがけない提案でした。
《兄さん、そろそろ仕送りをやめたらどう? もう母も高齢だし、施設に入れた方がいいんじゃない?》
伸一さんは、思わず言葉を失いました。
「これまで母の生活を支えるために、10年間毎月仕送りしてきたんです。弟夫婦からは“ありがとう”の一言もなかったのに、いきなり“やめろ”ですからね。『だったらお前が代わりに出すのか?』って言いたくもなりますよ」
さらに驚いたのは、弟夫婦の“本音”でした。
《こっちも子どもの学費で大変だったし、母の資産があるなら、うちも少しは相続したい》
母が持っていた貯蓄は数十万円ほど。相続を意識した発言であることは明らかでした。
「仕送りしながら、何度も“母の預金が底をつく前に”って伝えてきたのに…。10年も放置しておいて、“相続”って言葉が出るなんて、どれだけ自分勝手なんだと」
