「留学したいなんて、本当は思ってなかった」
「正直、最初は耳を疑いました。あんなに“行きたい”と言っていたのに、いざ準備が整ったら『行かない』って…」
そう語るのは、東京都内で広告関連の会社を営む吉田雄一さん(52歳・仮名)。名門大学の付属高校に通う次男・直樹さん(17歳)の“まさかの言葉”に、思わず言葉を失ったと言います。
吉田さんは長男の進学時にも私立理系大学の学費や一人暮らしの費用で約1,000万円近い支出を経験。直樹さんに対しても同様の覚悟をしており、次男が高校1年時に希望していた「高校卒業後の米国留学」に向けて、学費・渡航費・生活費を合わせて800万円以上を3年間かけて準備してきました。
「家計は余裕があるとは言えなかったですが、“子どもにはチャンスを与えたい”という一心でした。金融資産を一部解約して、教育ローンも検討していました」
しかし、高3の夏休み前、直樹さんから告げられたのは「やっぱり日本の大学に進む」という意思。しかも「留学したいなんて、本当は思ってなかった。期待に応えたくて言っていた」とまで言われ、吉田さんは複雑な気持ちに襲われました。
「親としては“夢を叶えさせたい”という気持ちが先行していましたが、本人の気持ちに寄り添うことを忘れていたのかもしれません」
高校の進路指導では「海外大学への進学実績」も学校の評価指標のひとつ。家庭でも「兄は理系大学、弟は海外大学」といった“理想の兄弟構図”を描いてしまっていた自覚があると言います。
用意していた800万円の資金は、結果的に手元に残りました。とはいえ、円安・物価高の昨今、今後の老後資金に回すには不確定要素も多いと吉田さんは感じています。
総務省『家計調査報告(2024年)』によれば、無職の高齢夫婦世帯の平均支出は月約25.6万円に対し、可処分所得は約22.2万円で、毎月約3.4万円の赤字が発生している状況。いわゆる「老後2,000万円問題」が示したように、年金収入だけでは生活費を賄いきれない世帯が存在する現状は、現在も大きく変わっていません。
