扶養義務は「無条件の仕送り義務」ではない
親の生活を支えることは、「扶養義務」という言葉で語られることがあります。
民法第877条では、直系血族には互いに扶養する義務があると定められていますが、これはあくまで「生活に困窮している場合に、最低限の生活を支える義務」を指します。親に一定の収入や資産がある場合や、子ども側の生活に余裕がない場合まで、無条件に高額な仕送りを求められるものではありません。
また、実際に援助を行う場合も、金額や方法は「子どもが無理なく継続できる範囲」であることが前提とされています。
美月さんは悩んだ末、元旦のLINEにこう返信しました。
「ごめんね。私も生活に余裕があるわけじゃないから、毎月の仕送りはできない」
それ以降、和子さんからの連絡は途絶えました。
「正直、罪悪感はあります。でも、それ以上に、『育てたのだから支えるのが当然』という前提で話をされてしまったことが、すごくつらかったんです」
美月さんにとって問題だったのは、金額そのものよりも、「娘の人生や生活が、当然のように親の延長線上に置かれている」と感じてしまったことでした。
厚生労働省『国民生活基礎調査(2024年)』では、単身高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答しています。高齢期の経済不安が深刻化していることは、統計からも明らかです。
しかし、だからといって「子どもに全面的に頼ること」は解決策ではありません。公的支援制度や地域の福祉サービスなど、選択肢は複数存在します。
「できる範囲で、親の力になりたい気持ちはありました。でも、“見返りを前提にした関係”になってしまったら、それはもう親孝行ではないと思ったんです」
そう語る美月さんの表情には、怒りよりも、割り切れなさと静かな悲しみがにじんでいました。
親子の関係は、年齢を重ねるほどに形を変えていきます。“支えること”と“縛られること”の境界線をどう引くのか。その問いに、簡単な正解はないのかもしれません。
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