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「金が欲しい」のではなく「老後が怖い」
相続は、家族の「思い」や「気持ち」が深く関わる、とても繊細なテーマです。筆者はファイナンシャルプランナー(FP)として、不動産や相続税などが複雑に絡んだ相談を受けた経験が多数ありますが、そこで痛感するのは、解決を阻むのは「金額」よりも「感情」の問題であることが多いという現実です。
相続人の誰かが「少しでも多くの財産をもらいたい」と主張し始めると、争続に発展することがあります。表面上は強欲に映るかもしれませんが、その心理の奥底にあるのは単なる金銭的な欲望ではなく、「老後のお金が足りるだろうか」という“切実な将来不安”や、過去の家族関係に基づく“誤解や不満”であるケースが大半です。
そうした負の感情が解消されず、参加者全員が疑心暗鬼になっている状態では、どんなに公平な分割案を提示しても争いの芽は摘めません。そうした意味では、全員が安心できる状態を作ることさえできれば、円満な解決は難しくないのです。
円満解決の鍵は「損して“徳”取れ」の精神
以前、ある相続の事例(筆者自身の祖母の相続)で、このような出来事がありました。 祖母(被相続人)が亡くなった直後、医師から「解剖をさせてほしい」という申し出がありました。その際、喪主を務めた相続人は、故人の尊厳とそれまでの医師との関係性を重んじて即座に断ったのです。
一見すると、遺産分割とは無関係な出来事に思えますが、この対応が他の親族(遺産分割の当事者)の心を動かしました。「医師の申し出を断ってくれたことがうれしかった」と感謝され、結果として遺産分割協議の場で「あなたの取り分を増やしてもいい」という金銭的な譲歩の提案を引き出すことにつながったのです。
この事例では、そうした提案の気持ちだけを受け取り、最終的に当初の提案通りに分割して協議は終了しました。日頃の振る舞いや、いざというときの「故人への敬意」が、相続における信頼関係を築く上での基礎となることを示しています。自分だけの利益を主張せず、まずは相手や故人を尊重する。そうした「損して“徳”取れ」の精神が、結果として自分自身にとってもプラスに働くことがあるはずです。
ただし、こうした心の余裕を持つためにも、やはり基盤となる「経済的な余裕」が欠かせません。
