国や企業の言っていることを鵜呑みにしていると、あなたの貴重な財産は減っていくばかり・・・。本連載では、TSPコンサルティング株式会社の代表取締役で、ファイナンシャル・プランナーの佐藤毅史氏の著書『お金でバカを見ない人になる36の知恵』(サンマーク出版)の中から一部を抜粋し、自分の財産を守るためのポイントをQ&A形式で解説していきます。

リスクを取らなければお金は増えないが・・・

【質問】

どうすれば株で儲けられますか?

 

あなたは「成長痛」という言葉を聞いたことがありますか?

 

子どものころに起こるもので、病気ではありません。正式には「骨端症(こつたんしょう)」と呼ばれ、骨の成長についていけない軟骨の部分に痛みが生じる障害です。身体にかぎらず、何か新しい変化を急激に起こそうとすると、この成長痛のようにどうしても反動が起きるものだと私は思っています。

 

「お金を増やそう」とするときも同じです。

 

あなたが購入しようとしている株などの金融商品でも反動が生じます。だって、金融商品を購入するということは、お金を増やそうと思っているからですよね。「お金を増やそう」とする行為は、収入増を狙うこと、つまり資産形成という成長スピードをこれまでよりも速めることです。急に成長しようとするわけですから、当然、成長痛のように痛みがともないます。

 

この場合、成長痛に相当するのはリスクです。リスクがあるからお金が増えるのだし、リスクがなければお金が増えるわけがありません。つまり、お金を増やそうとすると、必ず損する可能性がある、ということです。

 

金融商品とは、株だけでなく保険や投資信託など、銀行や証券会社、保険会社といった金融機関が販売する商品の総称ですが、これらはすべて「負けるギャンブル」です。

 

もちろん、こうした金融商品のなかでも、株には勝てる可能性がたしかにあります。それにもかかわらず「負けるギャンブル」と言い切れるのはどうしてなのか、その理由を、順を追ってご説明しましょう。

手数料分の「負け」からスタートする株取引

まず、金融機関は金融商品をあなたに「買ってもらうだけ」で利益が確定します。彼らは100%儲かります。だって手数料商売ですから。あなたが金融商品を買った後、それによって儲けても儲けなくても、彼らにとってはまったく関係ありません

 

たとえば、100万円分の株をあなたが購入したとします。その時点で、実は1万円程度の手数料を自動的に証券会社が差し引きます。お客に買ってもらうだけで、証券会社は何もせずに利益をあげられるのです。

 

一方、あなたは100万円で金融商品を買って、100万円で取引を始めたつもりになっていると思いますが、実際には99万円のスタートになっています。つまりあなたは、1万円の負けがスタート時点で確定しているんです。

 

そこからがんばって1万円を挽回し、さらに増やしていくことだって可能です。証券会社の社員も株を売るときには、「増えるかもしれませんよ」と言うでしょうし。でも、彼らは投資のプロではありませんから安易に信じてはいけませんよ。彼らは金融商品を売るプロであって、それで儲けるプロじゃないんです。

 

本当に儲けるプロなのだとしたら、日本の株価はどんどん上がっていくはずです。でも実際はそうじゃない。だから、彼らの「儲かる」「増える」という言葉を信じてはいけません

 

それに、入り口(株を買うとき)だけでなく出口(株を売るとき)でも彼らは手数料を取ります。つまり、入り口と出口で手数料を取れれば、その間にあなたが儲けようが損しようが、彼らにしてみたら知ったことじゃないんです。「資産を増やしましょう!」と証券会社の人は言いますが、あなたの資産が増えようが減ろうがまーったく彼らには関心がありません。商品を買ってくれさえすればいいんです。

 

なぜなら、自分たちが儲けることしか考えていないからです。ぜひ、彼らの売り文句である「あなたの資産を増やしましょう」を「われわれが儲けるために商品を買ってください」に頭の中で変換してみてください。1万円の損は100%確定していて、増えるかどうかが未確定だとしたら勝率は50%しかありません。

 

つまり、あなたは株を購入した時点で損することがほぼ確実なんです。金融商品を販売して、それを売ることで手数料をもらうということは、売れば自分の利益にはなるけれど、お客さまの利益になるとは限らないので、利益相反です。結局は自分のためでしかないのに、お客さまの資産を増やすためだからと、あたかもお客さまのためのように言って売っているんですからもはや詐欺レベルです。

身につけておきたい「お金を残す」という考え方

それでも株を買いたいと言うのであれば止めません。どうぞ買ってください。でも、その株を発行している会社のことをあなたはどれくらい知っているんでしょうか。たとえば、大手電機メーカーの東芝。レグザやダイナブックといったすばらしい商品をたくさん作っています。でも、2009年度から不正会計をしていたことが発覚しました。専門家たちでさえ見抜けなかったことを素人のあなたが見抜けるんですか?

 

その会社のことを知らないのに株を買うのは、目隠しして自動車を運転しているようなものです。どのくらいの速度を出して、どこに向かって走っているのかわからないのですから、事故が起きるのも当たり前。

 

そもそも、金融や経済の勉強をした人たちが銀行などの金融機関に勤めて投資をしているんです。しかも、彼らでさえ負けるときがある。それなのに素人のあなたが勝てると思うのが大間違い。戦車に三輪車で挑むようなものです。

 

要は、勉強もして、失敗もして、そうしてようやく利益が出るかどうかというのが金融商品なんです。ビギナーズラックで儲かるのであれば、それはパチンコと同じ。そんなものに大切なお金をつぎ込んでどうするんですか。

 

お金を増やそうとすればするほど損をする可能性が高まりますし、金融機関が笑顔で金融商品をすすめてくる本当の目的に気づけば、手を出す気はなくなるはずです。

 

お金を「残す」という考え方を身につけていれば、安易に「増やす」ことばかりを考えたりはしなくなるんです。

 

【答え】

儲けられません。金融機関はあなたが儲けることに興味がありませんし、彼らでさえ失敗するのが投資というものです。

本連載は、2015年10月刊行の書籍『お金でバカを見ない人になる36の知恵』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

お金でバカを見ない人になる36の知恵

お金でバカを見ない人になる36の知恵

佐藤 毅史

サンマーク出版

世の中には「ウラがある」話がけっこうあります。電子マネーやクレジットカード、株、投資信託などはその典型です。いずれも「便利ですよ!」「お金が増やせますよ! 」「初心者にも安心ですよ! 」という言葉で本質を見えなく…

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