「母さん、助けて…」冬の朝、工場勤めの息子から“ただごとではない”LINE。〈年金月12万円〉81歳母が財布を片手にコンビニへ走ったワケ【CFPが警告】

「母さん、助けて…」冬の朝、工場勤めの息子から“ただごとではない”LINE。〈年金月12万円〉81歳母が財布を片手にコンビニへ走ったワケ【CFPが警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

一人暮らしの80代女性のスマホに届いた、息子からの一通のLINE。「母さん、助けてくれ」――その言葉に、財布を握りしめて外へ飛び出しました。コンビニに向かった女性を待っていた「思わぬ真実」とは。今回はトータルマネーコンサルタント・CFPの新井智美氏が、高齢者が巻き込まれやすい典型的な詐欺の手口と、防ぐための具体策を解説します。

偶然会った友人「これ、本当に息子さん?」

その時、近所に住む紀子さんがちょうどコンビニに入ってきました。ATMの前で不安な表情で待っている雅恵さんを見て、「あら、どうかした? なんだか顔色が悪いわよ?」と声をかけてくれたのです。

 

雅恵さんは、「息子が大変なの、仕事で失敗したみたいで……」と紀子さんに息子から届いたLINEのやり取りを見せました。スマートフォンの画面を見た紀子さんは、涙ぐんでいる雅恵さんに「これ、絶対おかしいわよ。本当に息子さんなの? 確認した?」と聞いてきました。

 

「LINEで電話したんだけど、出られないって」と答える雅恵さんに、「LINE電話じゃなくて携帯の番号に電話してみて!」という紀子さん。携帯の番号に電話すると、3コールで幸一さんの声が聞こえました。「母さん、どうしたの? 何か急用?」と落ち着いています。

 

雅恵さんが届いたLINEの内容を幸一さんに話したところ、「え? そんなLINE送ってないよ。……それ、詐欺だよ!」との言葉。雅恵さんの身体から一気に力が抜け、コンビニの床に座り込みました。

 

「50万円も騙し取られるところだった……」

 

幸一さんも絶句。「母さん、本当に危なかったよ。電話してくれて本当に良かった」と電話口で何度も言ったそうです。

雅恵さんが狙われた理由

警察庁が発表している「令和7年上半期における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると、特殊詐欺の被害額は約597億円と前年同時期に比べ369億円も増加しています。そのうち、65歳以上の高齢者の割合は約53%と半分以上を占めており、ATMを利用した詐欺被害が集中しているとのこと。

 

雅恵さんは幸いにも未遂で終わったものの、同じような手口の詐欺は今も毎日のように起きています。雅恵さんだけでなく、高齢者全体に言えることですが、詐欺に巻き込まれやすいことには理由があります。

 

まずは「孤独感」。そして「家族を助けたいという強い気持ち」。そして「普段聞き慣れない言葉や仕組みに触れると不安が先に立ち、相手の指示をそのまま信じてしまう」という心理が働くのです。

 

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