「これ、全部引き出したのか…?」通帳を見て凍りついた
「なんとなく違和感があったんです。部屋に置かれていた通帳が、微妙に開いたままになっていて」
そう話すのは、都内在住の会社員・井上俊明さん(仮名・52歳)。年に数回、埼玉県内の実家に住む母・和子さん(仮名・82歳)のもとを訪れており、今回の帰省もその一つでした。
「母は年金で暮らしています。普段は慎ましい生活をしていて、『無駄遣いはしていないから心配しないで』とよく言っていたんですが…」
しかし、その日は違いました。ふとした拍子に目にした通帳の残高欄に、俊明さんは思わず声を上げそうになったといいます。
「1年ちょっとの間に、現金での出金が合計1,000万円近く記録されていたんです。振込ではなく、全部“ATM引き出し”や“窓口出金”」
年金生活の母に、なぜそんな大金が必要だったのか? 真っ先に頭に浮かんだのは「詐欺被害」でした。
「まさか、誰かにお金を渡してないよね?」
俊明さんの問いかけに、和子さんは一瞬、言葉に詰まったように見えました。そして小さく口にしたのは、意外すぎる理由でした。
「…お墓よ。あんたたちに迷惑かけたくなくて。いろいろ考えて、永代供養にしようと思って…」
実は和子さん、自身の死後について以前から強い不安を抱えていたといいます。「お墓はどうするのか」「管理は誰がするのか」といった問題が気になり、知人に紹介された寺院系の永代供養墓に関心を持っていたそうです。
しかし、契約したのは「高額な“生前契約型”供養付き納骨堂」。戒名料や管理費込みの“オプション”が次々と提示され、気づけば支払額は約800万円に。さらに、関連する仏具や法要費用も合わせると、最終的に1,000万円近い出費となっていたのです。
