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国内税法で課税関係を確定させてから、租税条約の適用を検討
国際的な課税関係を確定する際には、まず国内税法に基づいて課税関係を確定させ、その後に租税条約の適用を検討するという明確な順序を踏む必要があります。この手順が必要となるのは、租税条約は国の課税権を制限する(減免する)ためのものであり、国内法による課税の根拠を創設するものではないという、国際租税法における基本的な原則に基づくためです。
以下に、国内税法で課税関係を確定させてから租税条約を適用する手順と、その必要性について、段階を追って分かりやすく説明します。
1. 国内税法による課税関係の確定
課税の基礎となる国内法上の課税関係を確定させるために、以下の4つのステップが重要です。
①居住判定(居住形態の確定)
まず、所得を得た個人が日本の所得税法上、どの納税義務者の区分に該当するかを判定します。個人の国際税務において、居住形態の判定は最も重要であり、この区分によって課税される所得の範囲が大きく異なるからです。
②所得の源泉地判定と所得種類の特定
次に、得られた所得が日本国内で生じた「国内源泉所得」(17種類に分類)に該当するか、国外で生じた「国外源泉所得」に該当するかを判定します。所得の源泉地は、所得の種類により異なります。たとえば、給与所得の場合、原則として勤務者の体がある場所(勤務地)が所得の源泉地です。
③国内法上の課税範囲の確定
上記1(居住形態)と2(所得源泉地)の結果に基づき、国内税法上の納税義務(課税されるか、非課税となるか)を確定します。
たとえば、日本に住所を持つ「永住者」(日本の居住者の大半)であれば、国外で生じた所得(国外源泉所得)であっても課税対象となります。一方、「非居住者」であれば、国外源泉所得は課税されません。
④納税方法(源泉徴収または申告納税)の決定
最後に、所得の支払いが国内で行われたか国外で行われたか(支払地)を確認し、国内法に基づき、源泉徴収義務の有無や、申告納税(確定申告)が必要かを決定します。非居住者に対する一定の国内源泉所得の支払いについては、支払者が源泉徴収義務を負います。

