月々の修繕積立金は安ければいいとは限らない
不朽のマンションさえあれば悩みのタネは消えるのですが、現時点では残念ながら経年劣化するマンションしか存在していません。すなわち定期的な修繕と切っても切れない関係にあるのです。そのために修繕積立金を蓄えていくわけですが、この積立金が不足していると、急な修繕で出費が発生した場合、住民全体に大きな負担がかかる可能性があります。
月々の修繕積立金が安く設定されているマンションも存在します。修繕の必要がない平時の費用負担は軽減されるため、住人としてはありがたく感じるかもしれませんが、将来的に大きなリスクを伴うことがあります。積立金が十分でないと、いざというときにさまざまな問題が発生するのです。
修繕積立金の額は通常、マンションの長期修繕計画に基づいて設定されます。この計画は通常10年から20年先を見据えて、どの部分にどの程度の修繕が必要になるかを予測し、積立金を決定するというもの。あくまで予測であるため、定期的に実際の劣化状況をチェックしながら長期修繕計画を見直し、必要に応じて積立金額の調整が必要です。近年では物価高や人材不足が原因で工事費用が増加している点が問題視されています。こうした修繕費用の変動も考慮に入れると、積立金額の設定は余裕を持った金額に越したことはないのです。
マンションのビッグイベントである大規模修繕や予期せぬ緊急修繕が必要になった際、積立金が不足していると、各住民に対して一時金の徴収をしなければなりません。住民視点で考えると、数千円程度の徴収であれば影響は小さいかもしれませんが、まとまった額になると大きな負担になります。住民にはそれぞれの経済状況がありますから、急な出費は大きな迷惑となる可能性があります。
また、しっかりと計画を立てて修繕積立金を徴収していたとしても、マンションの劣化状況によっては修繕時期が早まることも考えられます。業者に定期的な建物診断を依頼し、修繕のタイミングや範囲を見直すことで、適切な積立金額が算出できれば安心です。
ほかにも金銭的なリスクがあります。修繕積立金が不足しているために修繕措置が遅れてしまうケースです。適切なタイミングで修繕が行われないと建物の劣化が加速し、その結果マンション全体の資産価値が下がる可能性があります。資産価値の低下は将来の売却価格にも影響を与えるため、適切なタイミングで然るべき修繕を行うことが重要となります。
修繕積立金は低額に設定すればよいというものではなく、マンションの長期的な維持管理に必要な資金を確保するため、妥当な金額で設定されるべきです。管理組合は常に長期的な視点を持ち、マンション全体の資産価値を守るため積極的な運営が求められます。
竹中 信勝
タワマン理事長
