今回は、遺産分割における「特別受益」「寄与分」の取扱いについて解説します。※本連載では、税理士・内田麻由子氏監修『図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版』(ナツメ社)の中から一部を抜粋し、相続の中でも特に問題になりやすい「遺産分割」の基本を解説していきます。

ほかの相続人の判断に委ねられる「特別受益の持戻し」

複数の相続人で遺産を分割する場合、相続分どおりの配分では不公平が生じてしまうことがあります。

 

たとえば、被相続人の生前にまとまった額の財産が特定の相続人にのみ贈与されていたという場合です。民法では、その援助分を特別受益と呼び、通常、婚姻の際の持参金、学費や住宅資金のための援助金などがそれにあたります。そして、受益分を相続財産に加えたうえで相続分の算定を行います。これを特別受益の持戻(もちもどし)といいます。

 

特別受益者(特別受益をもらっていた人)の相続分は、被相続人から一部を前倒しでもらっていたと考えて、本来の相続分から受益分を差し引いた額となります。

 

ただし、特別受益はあくまでも相続人どうしの不公平をなくすための制度なので、特別受益の持戻しを行うかどうかは、ほかの相続人の判断に委ねられます。相続人どうしの間で、「特別受益があっても、気にしない」となれば、遺産分割の際に考慮する必要はありません。

財産の維持や増加に貢献した相続人であれば・・・

生前、被相続人の財産の維持または増加に貢献してきたという相続人が利用できる制度があります。貢献した分を金銭的に評価し、寄与分として貢献した人の相続分にプラスすることで公平性を図ろうというものです。

 

ただし、寄与分として認められるのは、被相続人の事業を無償で手伝ってきたり、資金提供をしてきたり、長期間にわたって療養介護をして被相続人の経済的な負担を軽くしてきたり、といった特別の場合に限られます。

 

「妻や子の立場にある人が、被相続人の入院中、心を尽くして世話をした」という程度では、扶養義務の範囲内とされ、寄与分とは認められません。

 

また、寄与分を主張できるのは、相続人のみです。内縁の妻や息子の嫁など相続人でない人は、どんなに被相続人に対して貢献していたとしても、寄与分を主張することはできません。

 

【Point】

遺産分割では、生前に贈与を受けた財産があるか、被相続人の財産形成に貢献したかなども考慮します。

 

【ココを押さえる!】

□被相続人の生前に特別にもらった財産がある相続人は、特別受益としてすでにもらった分を差し引かれる。
□被相続人の財産の維持や増加に貢献があったと認められれば、寄与分として考慮される。
□特別受益や寄与分をどの程度認めるかは、遺言がなければ、相続人どうしの話し合いによって決める。

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

内田 麻由子

ナツメ社

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