今回は、遺産分割協議のために相続人の「代理人」が必要なケースについて解説します。※本連載では、税理士・内田麻由子氏監修『図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版』(ナツメ社)の中から一部を抜粋し、相続の中でも特に問題になりやすい「遺産分割」の基本を解説していきます。

法定相続人の中に「未成年者」がいる場合は・・・

遺産分割協議では相続人全員の同意が必要となるのですが、遺産分割協議が法律行為にあたるため、未成年者(満20歳未満)が参加することはできません。法定相続人の中に未成年者がいる場合には、代理人を立てることが求められます。

 

通常、未成年者の代理人は、その親(親権者)が務めます。ところが、親も相続人となっているようなケースでは、親子は利益相反の関係にあるため、別の誰かに代理人となってもらうことが必要です。

 

未成年者の代理人は親権者が勝手に決められるものではなく、家庭裁判所に特別代理人を選定してもらわなければなりません。この申し立てができるのは、親権者と利害関係者のみです。

判断能力が低下している相続人を守る「成年後見制度」

相続人が認知症や知的障害・精神障害などによって合理的な思考や判断ができなくなっている場合にも代理人が必要です。

 

このような状態の相続人の権利や利益を守るために設けられたしくみに成年後見制度があります。この制度に基づき、判断能力が低下している相続人の代わりに協議に参加し、相続後も財産管理や契約を継続して行っていく人を成年後見人として選任します。

 

成年後見制度は、相続人本人にまだ判断能力があるうちに自分の意思で任意の人を選ぶ「任意後見人」と、配偶者や親族などの申し立てによって家庭裁判所に選任してもらう「法定後見人」の2つに分けられます。相続人の親族の中に後見人として適当な人がいない場合には、法律や福祉の専門家が選任されることも多いようです。

 

なお、家庭裁判所で未成年者の代理人や認知症の人の後見人を選任する手続きには、とても時間がかかります。

 

そのため、相続人の中に未成年者や認知症の人がいる場合には、遺言書をつくっておくことをおすすめします。遺言書があれば、遺産分割協議のためにわざわざ代理人・後見人を選任する手続きは不要になるからです。

 

【Point】

未成年者や認知症患者など、合理的な判断ができない相続人がいる場合は、代理人を立てる必要があります。

 

ココを押さえる!

□未成年の相続人は遺産分割協議に参加できないため、法定代理人または特別代理人を選任する。

□認知症などで判断能力がない相続人には、成年後見制度を利用する。

□相続人の中に未成年者や認知症の人がいる場合には、遺言書をつくっておいたほうがよい。

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

内田 麻由子

ナツメ社

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