一般的な家庭でも身近な問題として取り上げられることが多くなった相続対策。本連載では、税理士・内田麻由子氏監修『図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版』(ナツメ社)の中から一部を抜粋し、相続の中でも特に問題になりやすい「遺産分割」の基本を解説していきます。

遺産は遺言の指定どおりに分ける指定分割が原則だが・・・

被相続人の遺産は、相続人全員の共有財産とされるため、通常は分割することが必要となります。遺産は、遺言の指定どおりに分ける指定分割が原則です。

 

指定が法定相続分と違っていても、基本的には遺言が優先されます。ただし、遺留分を侵害されている相続人がいる場合は、遺留分減殺請求をすることができます。

 

なお、遺言があったら必ず遺言のとおりにしなくてはいけないと思っている人が多いのですが、相続人全員の合意があれば、遺言の内容に関係なく、相続人どうしの話し合いによって財産を分けることもできます。この話し合いを遺産分割協議といい、全員合意を目指します。

 

合意した内容は遺産分割協議書にまとめます。このとき、遺産分割の目安となるのが法定相続分であり、これに特別受益や寄与分を考慮して決定していきます。遺言がない場合にも、相続人全員で遺産分割の話し合いを行います。

協議がまとまらない際に利用する家庭裁判所の調停

遺産分割協議がなかなかまとまらない、あるいは協議に出席しない相続人がいるという場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

 

調停は、家庭裁判所の裁判官と家事調停委員による調停委員会のもと、相続人どうしの話し合いが円滑に運ぶように支援をしてくれる制度です。

 

調停では、各相続人の意見を聞き出したうえで調停委員会が調整を行ってくれます。これにより協議が合意に至れば、合意内容を明記した調停調書が作成されて遺産分割は成立します。

 

ただし、調停委員会は強制力を持たないため、調停によっても合意に至らなかったときには、法的強制力のある審判に移行します。審判になると、家庭裁判所が各相続人の経済状況や年齢や職業などをみて分割方法を決定します。審判の内容に不服ならば、2週間以内に即時抗告の申し立てを行うことが必要です。

 

【Point】
遺産分割のための話し合いには原則として相続人全員が参加し、合意によってはじめて成立します。

 

【ココを押さえる!】
□遺産分割のための話し合いが必要な場合は、相続人全員参加による遺産分割協議を行う。

□協議が合意に至らないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。

□調停でも合意に至らないときは審判に委ねられる。

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

図解 いちばん親切な相続税の本 16-17年版

内田 麻由子

ナツメ社

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