「ベンチャーキャピタル(VC)投資」は、通常の株式投資では考えられないようなリターンが期待できる投資手法です。一方、一般の投資家がこの投資手法を取り入れることは容易ではありません。では、「高いリターンが期待できる」と知りつつ、今後も個人投資家に投資機会が巡ってくることはないのでしょうか。Keyaki Capital株式会社の木村大樹代表取締役CEOが、VC投資の実態と日本の個人投資家に訪れるかもしれない「投資機会の可能性」を解説します。
約3,400倍のリターンも…「VC投資」の可能性
株式投資で10倍のリターンを得ることを「テンバガー」といいます。これは個人投資家にとって夢のある成果ですが、ベンチャー企業に投資を行う「ベンチャーキャピタル(VC)投資」の世界では、それをはるかに上回るリターンを得られる可能性を秘めています。
たとえば、宿泊施設を探す人と貸したい人をつなぐプラットフォーム「Airbnb」に、2008年のシードラウンド※で投資したVCは、2020年のIPO時点で約3,400倍のリターンを得たとされています。これほどの成果は、上場株式投資の世界では極めて稀です。
※ シードラウンド……ベンチャー企業における「資金調達ラウンド」のひとつ。事業の立ち上げ初期にあり、プロダクトやサービスがまだ開発段階にあることが多く、将来性に賭けて出資する投資家が中心となる。
いまや、上場株式だけを見ていては、世界の真の成長を捉えることは難しくなっています。未上場のまま急成長し、評価額が10億ドルを超える「ユニコーン企業」や100億ドルを超える「デカコーン企業」、さらに1,000億ドル(約15兆円)に達する「ヘクトコーン企業」と呼ばれる企業まで登場しているからです。
実際、AI時代のインフラを支えるOpenAIやAnthropic、Databricksといった企業は、依然として未上場のままです。
とはいえ、VC投資を取り巻く環境には、日米で大きな差があります。2025年時点で、ユニコーン企業は米国で704社あるところ、日本ではわずか8社。大成功企業に投資できる機会の母数そのものが、米国とはケタ違いです。
加えて米国では、十分な事業成長を遂げるまで上場をあえて先送りにする企業が増えており、その間の成長によるリターンは、未公開株に投資した限られた投資家が享受しています。
ひとくちに「VC投資」といっても、日本と米国のあいだには投資機会の規模や成長スピードの違いといった大きな「格差」が存在しているのです。
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Keyaki Capital株式会社
代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークの証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。
2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=15816
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連載Keyaki Capital代表が語る「オルタナティブ投資」の面白味
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〈参考文献〉
■Garfinkel, J. A., Levine, R., & Strebulaev, I. A. (2025). Alumni Networks in Venture Capital Financing. Journal of Financial and Quantitative Analysis, 60(2), 327–362. (https://doi.org/10.1017/S0022109024000074)
■Howell, S. T., Nanda, R., & Lerner, J. (2025). The tyranny of the personal network: Limits of arm’s-length fundraising in venture capital. NBER Working Paper No. 31242. (https://doi.org/10.3386/w31242)