「資産運用の常識」が乖離する世界と日本
資産運用における世界の常識は株式と債券への分散投資であり、シンプルに株式6割:債券4割という”シックスティフォーティ”という考え方が一般的だ。機関投資家はオルタナティブにも分散し、個人にもその考え方が浸透し始めている。
翻って日本では、”米国株式へのインデックス投資”が資産運用の王道であるかのように語られているように思う。S&P500インデックスにパッシブ投資すれば銘柄が十分に分散されるという。しかしそれでは米国株式へ”集中投資”することになるではないか。
ここでは世界と日本でなぜこのような常識の乖離が生まれてしまったか考察したい。犯人はずばり「金利」だろう。
日本で長く忘れ去られていた「金利」の存在
日本では「金利のない世界」が長く続いたために、人々は金利の存在すら忘れてしまった感がある。国債などのベース金利がゼロになり、人々はゼロ金利で銀行に預金し、銀行はあらゆる優良先に極めて低い金利で貸出しを行ってきた。
したがって国内の債券には金利がほぼなくなり、債券への投資はリターンを生まなくなった。結果的に債券投資が個人の資産運用の対象から外れ、消去法的に資産運用=株式投資と考えるようになったことはある意味理にかなっている。
そのうえで、停滞する日本より米国をはじめ海外のほうが経済が成長し、株式も上昇するとの考えから、資産運用の王道は米国株インデックス(S&P500)や世界株インデックスへのパッシブ投資とみなされるようになったのだろう。
金利が急激に戻るいま、基本スタンスは「分散投資」
この思考プロセスは理解できるのだが、この結論の矛盾を指摘したい。資産運用=株式投資という考えは、あくまで金利がゼロで債券のリターンが期待できない環境で消去法として導かれたはずだ。
しかし現在、世界では金利が急激に戻り、米ドルのベース金利は5%を超えている。ドル建ての債券に投資すれば1桁後半から2桁の利回りが期待できるようになっている。このような環境においては、資産運用は株式のみならず債券への分散をするのが基本だ。
ちなみに日本円で暮らす日本人にとって、ドル建て資産への投資は為替リスクを負うことになる(※為替リスクをヘッジすべきかどうかの議論は別途したい)。
しかし前述のロジックで米国株に投資するというのなら、ドル円の為替リスクは許容し米国市場で投資するということだから、利回りの高い米国の債券にも投資するのが理にかなっている。
さらに1歩踏み込んで、オルタナティブにまで分散することだって、その分野で奥の深い米国に投資するなら可能になるはずなのだ。
昨今もてはやされているS&P500インデックス一筋という考えには矛盾があり、投資としてもリスクが高いことは認識すべきだろう。
木村 大樹
Keyaki Capital株式会社
代表取締役CEO
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