認知症が心配でも、「精神科に行こう」と言いにくい
早期に専門医を受診することが大切
親の言動に「あれっ?」と思う点が増えてくると、もしかして認知症では……と不安になります。
医師の診断を受けて早期に治療すれば、認知症であっても進行を遅らせることができるケースもあります。認知症だと思っていたら、高齢者特有の「うつ」だったり、薬の飲み合わせが悪いことが原因だった、なんていう場合も。いずれにしても早期に受診し、治療を開始することが重要だといえるでしょう。
それでも、「精神科」や「もの忘れ外来」に親を連れて行くのはハードルが高く、手をこまねいている子は多いものです。しかし、そのままにしておいたために、認知症の症状が進行してしまい、本人や家族に大きな負担がかかることも少なくありません。
提案方法を工夫する
ウソも方便という言葉があります。例えば、下記のように親に提案して、連れ出すことに成功した子がいます。どう言えば耳を貸してくれるかは、親の性格や日頃の親子関係によっても違います。
【親に認知症の専門医受診を促す話し方例】
・「70歳以上は全員、認知症の検査を受診することが決まった」と話す
・「今月中だと、認知症の検査は無料。来月からは有料になるよ」と話す
・親の主治医にお願いして、「高齢者の健康診断は脳の検査もセットです」などと言ってもらい、総合病院で検査する
※「ウソも方便」とはいえ、「食事に行こう」と誘って病院に連れて行くようなことはNG。当人が「だまされた」と思うと、今後のコミュニケーションに影響する
ただ、「もっとひどくなっても、知らないからね」などと喧嘩腰にならないように。「お父さんを介護することになるお母さんのために受診して」と頼むのも効果的です。
「認知症初期集中支援チーム」に相談
各自治体が設置している「認知症初期集中支援チーム」に支援を依頼する方法もあります。窓口は、親の暮らす地域を管轄する地域包括支援センター。医療・介護の専門職がチームとなって自宅を訪問し、本人の様子を確認し、受診や介護保険のサービスを利用できるようにサポートしてくれます。利用できるのは40歳以上で、自宅で生活しており、認知症が疑われる人または認知症の人で、次のいずれかに該当する人です。
・認知症の診断を受けることを本人が拒否している
・病院の受診を中断してしまっている
・介護サービスの利用に、うまくつながらない
・認知症の症状が強く、対応に困っている
【認知症初期集中支援チームとは?】
・複数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人や認知症の人およびその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的(おおむね6か月)に行い、自立生活のサポートを行うチーム
・地域包括支援センター、診療所、病院、認知症疾患医療センター、市町村の本庁などに配置されている
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト

